インドのスキルギャップを埋めるEmversity、評価額1.2億ドルに
AIが労働市場の一部を自動化する中、インドの労働力育成スタートアップであるEmversityが、AIでは代替できないと見られる職種の人材パイプラインを構築し、評価額を倍増させました。同社は新たな資金調達ラウンドで3000万ドルを調達し、インドの労働市場における即戦力人材の育成を拡大します。今回のシリーズAラウンドはPremji Investが主導し、Lightspeed Venture PartnersとZ47が参加。この資金調達により、Emversityの評価額は税引き後1億2000万ドルとなり、2025年4月のプレシリーズAラウンド時の約6000万ドルから倍増しました。これまでの総調達額は4600万ドルに達しています。
インドの深刻なスキルギャップとEmversityの戦略
インドでは、大学卒業生が即戦力となるスキルを持たずに労働市場に参入する一方で、主要なサービス産業では訓練された人材の採用に苦労するという、深刻なスキルギャップに直面しています。特に医療分野では看護師の不足が指摘され、ホスピタリティ産業でも55%から60%の需要と供給のギャップがあると推定されています。Emversityは、このギャップを埋めるために、雇用主が設計した研修プログラムを大学のカリキュラムに統合し、インド政府の国家技能開発公社(NSDC)と提携した技能センターで短期認定と就職支援を提供しています。
AI時代に求められる「グレーカラー」職種への注力
Emversityは、看護師、理学療法士、医療検査技師といった医療系の専門職や、ゲストリレーション、飲食サービスなどのホスピタリティ職を含む、「グレーカラー」と呼ばれる実践的な訓練と資格を必要とする職種に焦点を当てています。同社のVivek Sinha CEOは、AIが書類作成や電子カルテの記録といった看護師の事務作業を削減する一方で、「ICUで2床あたり1人の看護師が必要とされる場合、AIが看護師を代替することはできない」と述べ、現場での実践的なスキルと人間的介入の重要性を強調しています。
パートナーシップと成長戦略
設立2年のEmversityは、すでに23の大学・短大の40以上のキャンパスと提携し、Fortis Healthcare、Apollo Hospitals、IHCL (Taj Hotels)などの大手雇用主と協力して、職種別の研修モジュールを共同で設計しています。これまで約4,500人の学習者を訓練し、800人の候補者を就職させました。同社は雇用主からは料金を徴収せず、提携機関からの手数料とスキルセンターでの短期認定プログラムを通じて収益を得ています。粗利益率は約80%で、顧客獲得コストは売上高の10%未満に抑えられています。今回の資金調達により、Emversityは今後2年間で200以上の拠点に拡大し、医療・ホスピタリティ分野への注力を深めるとともに、エンジニアリング・調達・建設(EPC)や製造業などの新産業への参入も計画しています。将来的には、日本やドイツのような高齢化が進む市場における国際的な人材需要にも応える機会を見出しています。
