はじめに:テック業界に高まるICE批判の声
米国において、国境警備隊(ICE)による人権侵害への懸念が拡大する中、テック業界の従業員450人以上が連名でCEOに対し、ICEの活動を非難し、ホワイトハウスに介入するよう求める書簡を送りました。この動きは、ミネアポリスで発生した市民殺害事件を受けて加速しており、大手テック企業のリーダーたちに倫理的な立場を明確にするよう求める圧力が強まっています。
この書簡は、Google、Meta、OpenAI、Amazon、Salesforceなどの企業に所属する従業員によって署名され、CEOたちに「ICEに米国各都市から撤退するよう要求する」ことを求めています。
事件の背景:ミネアポリスでの悲劇
今回の抗議行動のきっかけとなったのは、ミネアポリスで発生した一連の悲劇です。3週間前にはICEの捜査官が米国市民のRenee Good氏を射殺し、週末には国境警備隊員が37歳の集中治療室看護師Alex Pretti氏を射殺しました。
これらの事件を受け、ミネアポリスは大規模な連邦移民作戦の焦点となっており、その戦術は「軍事占領」と評されるほど過激なものです。連邦捜査官と抗議する地域住民との間で衝突が発生し、催涙スプレー、ゴム弾、音響兵器などの群衆制御戦術が無差別に用いられています。
テック企業の反応と倫理的ジレンマ
過去には、トランプ大統領がサンフランシスコに州兵を派遣すると脅した際、テック業界のリーダーたちがホワイトハウスに連絡し、撤回させたという成功事例があります。しかし、今回の一連の事件に対しては、多くの有力者が沈黙を保っています。一部のリーダーは明確な立場を表明していますが、業界全体としては意見が分かれています。
- 声を上げたリーダーたち:
LinkedIn共同創設者のリード・ホフマン氏はICEの運営方法を「人々にひどい」と批判。Khosla Ventures創設者のヴィノード・コースラ氏は現在の強制執行を「意識のない政権に力を与えられた、マッチョなICE自警団が暴走している」と表現しました。Google DeepMindのチーフサイエンティスト、ジェフ・ディーン氏やOpenAIのグローバルビジネス責任者、ジェームズ・ダイエット氏も公に懸念を表明しています。Signalのメレディス・ウィテカー氏やAnthropicのCEOダリオ・アモデイ氏も、民主的価値と権利の保護を訴えています。 - 沈黙を保つ、あるいは政権を支持する動き:
一方で、Amazonのジェフ・ベゾス氏、Appleのティム・クック氏、Googleのスンダー・ピチャイ氏、Metaのマーク・ザッカーバーグ氏といった業界のトップは、これまでICEの活動について公に発言していません。OpenAI社長のグレッグ・ブロックマン氏とその妻は、トランプ大統領と関連する候補者に多額の寄付を行っています。イーロン・マスク氏に至っては、ICEの活動を積極的に支持し、抗議者を「純粋な悪」と呼んでいます。
ICEとの契約解除を求める声
テックワーカーからの書簡は、各企業のCEOに対し、ICEとのすべての契約を解除するよう求めています。これは経済的に大きな要求となる可能性があります。現在、複数のテック企業がICEと契約を結んでおり、特に以下の企業がその主要なパートナーです。
- Palantir:AI駆動の監視プラットフォーム「ImmigrationOS」構築のため、昨年3000万ドルの契約を獲得。
- Clearview AI:顔認識技術をICEに提供する契約を締結。
- Amazon Web Services、Microsoft、Oracle:国土安全保障省およびICEにクラウドインフラとITサービスを提供。
IT企業の今後の対応が注目される
テック業界は、その技術が社会に与える影響と、倫理的な責任について常に問われています。今回のICEに対する抗議は、テクノロジーがどのように利用されるべきか、そして企業が政治的な問題に対してどのような姿勢を取るべきかという、重要な議論を提起しています。今後、大手テック企業が従業員からの要求に対し、どのような対応を示すのか、その動向に注目が集まっています。
