訴訟の背景:ノーフォーク市のALPRシステム
米国バージニア州ノーフォーク市が、ナンバープレート自動認識システム(ALPRs)の導入を巡る住民訴訟で勝訴しました。ノーフォーク市は、Flock Safety社製の約200台のカメラからなるALPRシステムを運用しており、住民からは「ドラグネット(大規模な網羅的)監視プログラム」としてプライバシー侵害の訴えが提起されていました。
連邦地裁の判断:合憲性と「プライバシーの期待」
米連邦地方裁判所のマーク・S・デイビス判事は、51ページにわたる判決文で、ノーフォーク市のALPRシステムは合憲であると判断し、ベンチトライアル開始の数日前に住民側の訴えを棄却しました。判事は、「原告は、被告のALPRシステムが個人の移動の全体を追跡する能力があることを証明できていない」と述べました。また、ALPRsの使用が過度に侵襲的になる時期が来る可能性は認めつつも、「少なくともノーフォークにおいては、その日はまだ来ていない」と結論付けました。
この判決は、1983年の最高裁判決「Knotts v. United States」を法的根拠としています。この判例は、公道を移動する際には「合理的なプライバシーの期待はない」というもので、過去数十年にわたりALPR技術の法的基盤となってきました。
進化するALPR技術とFlock Safetyの台頭
Flock Safety社は、過去10年間で米国最大のALPRベンダーへと成長しました。同社のカメラは単なるナンバープレート番号の読み取りを超え、AIを活用して車種、モデル、さらには「自転車ラック」や「レッカー車」といった特定の視覚的特徴まで識別し、自然言語によるクエリで検索できる能力を持っています。このような高度な機能は、従来のALPR技術とは一線を画しています。
高まるプライバシー懸念と専門家の警告
しかし、今回の判決に対しては、プライバシー侵害への懸念が根強く残っています。住民側の代理人を務めたInstitute of Justiceの弁護士は、「現代のナンバープレートリーダーシステムは、1980年代初頭の技術とはまったく異なる」と指摘し、数週間にわたり市内のほぼすべてのドライバーの移動を追跡できる現状が、個人の生活に関する多くの情報を示唆すると主張しています。
また、George Washington大学の法学教授アンドリュー・ファーガソン氏は、今回の判決を「用心深く、かつ危険」であると批判しました。彼は、「公の場ではプライバシーの期待がない」という論理は、すべての街角にALPRカメラを設置することを正当化する危険性があると警告。さらに、宗教施設、銃器練習場、医療クリニック、依存症治療センター、抗議活動の場といった特定の場所でのALPRsの利用が、個人のプライバシーを著しく侵害する可能性を指摘しています。
実際、カリフォルニア州サンタクルーズやバージニア州シャーロッツビルなど、一部の自治体では、技術が侵襲的すぎるとしてFlock社との契約を終了しています。昨年には2人の上院議員がFlockカメラの「悪用は避けられない」として懸念を表明しており、この問題は今後も議論を呼びそうです。
監視技術の未来と法制度の課題
Flock Safety社は判決を歓迎し、同社のシステムが「適切な制限と保護措置の下で使用される場合、個人の生活を詳細に描写するものではなく、継続的な監視によって引き起こされる憲法上の懸念を引き起こさない」とコメントしました。しかし、AIの進化により監視技術が高度化する中で、既存の法制度がいかにして個人のプライバシーを保護し、技術の進歩とのバランスを取っていくのかが、今後の大きな課題として浮上しています。
