ゾウの鼻ヒゲの構造が触覚「知性」を備えている

ゾウの鼻(トランク)は、食べ物を探す際には柔軟に曲げ伸ばしができ、ピーナツやチップのような繊細な物体をつかむこともできる驚異的な器官です。その感度の高さはヒゲが果たす役割と深く関係しており、新たな研究によると、ゾウの鼻ヒゲには独自の構造があり、これが触覚「知性」を備えていることが明らかになりました。

ゾウの鼻ヒゲの特異な構造

この新しい研究は、科学誌Scienceに掲載されました。これまでの研究では、ネズミや猫など多くの哺乳類が共通のヒゲ( vibrissae)の解剖学的構造を持っていることが明らかになっています。

ヒゲの複雑さと機能性

ネズミの場合、約30本の大ヒゲと数十本の小さなヒゲがあり、これらは「スキャンセンサーモーターシステム」として機能し、テクスチャーアナリシスや道筋を求めるアクティブタッチ、パターン認識、物体位置検出など多様なタスクを可能にします。

ゾウの鼻ヒゲの研究

マックスプランクインテリジェントシステム研究所でポスドクとして働くアンドレアシュルツ博士と共同研究者は、アジアゾウの鼻ヒゲについて微小CT画像、電子顕微鏡、機械的テスト、機能的なコンピューターモデリングを組み合わせて調査しました。

その結果、ゾウの鼻ヒゲは厚くて刃のような形状で、ネズミやネコのヒゲとは異なります。内部には空洞と複数のチャネルがあり、馬の蹄鉄や羊の角に似た構造を持っています。

触覚「知性」

研究チームは、ゾウと猫のヒゲを個々の細胞サイズのダイヤモンドキューブで押して、その硬さを測定しました。結果として、両者のヒゲの基部はプラスチックのような硬さがありましたが、先端に向かって柔らかくなり、弾力性のある「ゴム」に近づきました。

この硬さ勾配が触覚感度に影響を与える可能性を確認するため、研究チームはゾウのヒゲの大まかな形状を3Dプリントし、その効果を検証しました。結果として、この人工的なゾウヒゲは非常に敏感なツールであることがわかりました。

「異なる部分で柵をたたくと、先端ではソフトで優しく、基部では鋭く強く感じられた」と、シュルツ博士の指導教員であるカタリナクシェンベッカーは述べています。「視覚に頼らずとも触れている場所がわかるのです」。

この研究結果から、ゾウの鼻ヒゲの形状、多孔性、硬さが組み合わさって、接触点を検出する地図を提供していることがわかりました。これは「体化知能」と呼ばれる自然現象であり、人工的なゾウのような柔軟性を持つセンサーは、計算コストを最小限に抑えながら正確な情報を提供することが可能です。


元記事: https://arstechnica.com/science/2026/02/unique-structure-of-elephant-whiskers-give-them-built-in-sensing-intelligence/