OpenAI、AI規制推進派に警察を派遣か
OpenAIがAI規制を推進する団体「Encode AI」の弁護士、ネイサン・カルビン氏の自宅に警察官を派遣し、召喚状を送達したと報じられ、波紋を呼んでいます。この行為は、AI企業による批判者への威圧と受け止められ、AI業界内外で議論を巻き起こしています。
召喚状の内容とカルビン氏の主張
カルビン氏によると、ある火曜日の夜、夕食中に保安官代理が自宅を訪れ、OpenAIからの召喚状を手渡しました。この召喚状は、カルビン氏個人と彼が所属するEncode AIの両方に向けられたもので、カリフォルニア州の議員、大学生、元OpenAI従業員との個人的なメッセージの提出を求めていたといいます。
カルビン氏は、OpenAIがイーロン・マスク氏に対する訴訟を口実に、批判者を威圧し、マスク氏が背後にいるかのように示唆しようとしたと主張しています。彼は、この行為が「通常ではない」と述べ、OpenAIが規制法案が議論されている最中に、無関係な訴訟を利用して規制推進派を脅迫したと非難しています。
OpenAIの反論と背景
OpenAIは、この件についてThe Vergeに対し、最高戦略責任者であるアーロン・クォン氏の投稿を引用して回答しました。クォン氏は、「Encodeがイーロンの法的異議申し立てに参加した理由の全体像を理解することが我々の目的だった」と説明しています。また、保安官代理が部分的に召喚状送達業務を行うことは「ごく一般的」であるとも付け加えています。
この召喚状は、OpenAIがマスク氏に対して起こした反訴の一環として発行されました。OpenAIは、マスク氏が「OpenAIの動きを遅らせるための悪意ある戦術」に関与していると主張しています。Encode AIは、AIの安全性向上を提唱しており、OpenAIの非営利ミッション維持に関する公開書簡を提出したり、カリフォルニア州のAI法案「SB 53」の成立を推進したりしていました。
他の団体への影響と内部からの懸念
AI監視団体「The Midas Project」の創設者であるタイラー・ジョンストン氏も、同様にOpenAIから召喚状を受け取ったと報告しています。ジョンストン氏によると、OpenAIは同団体に対し、ジャーナリスト、議会関係者、パートナー組織、元従業員、一般市民とのOpenAIの再編に関するすべての対話リストを要求したとのことです。
The Midas Projectのチーフ・オブ・スタッフであるジャック・ケリー氏は、OpenAIのクォン氏のコメントに反論し、「我々は訴訟の当事者ではないにもかかわらず、同様の召喚状を受け取った」と述べています。
OpenAIのミッションアライメント責任者であるジョシュア・アキアム氏も、カルビン氏のXへの投稿に対し、「おそらく私のキャリア全体のリスクを冒して言えば、これはあまり良いこととは思えない」とコメントし、社内からも懸念の声が上がっています。
セキュリティニュースとしての重要性
この一連の出来事は、AI技術の急速な発展とそれに伴う規制の必要性が高まる中で、大手AI企業が批判的な意見や規制推進の動きに対してどのような姿勢を取るのかという、重要なセキュリティと倫理の問題を提起しています。企業が法的手段を用いて活動家や監視団体を威圧する行為は、透明性や説明責任を求める声に対し、負のシグナルを送る可能性があります。AIの安全な発展のためには、企業と規制推進派との健全な対話が不可欠であり、今回の件は今後のAIガバナンスのあり方に大きな影響を与える可能性があります。
元記事: https://www.theverge.com/news/798523/openai-ai-regulation-advocates-subpoenas-police