はじめに
Coros Nomadは「どこへでも行ける、何でもできる」アドベンチャーウォッチとして市場に投入されました。GPS、オフラインマップ、ヨガからボルダリングまで多岐にわたるアクティビティ追跡機能を備え、特にキャンパーやバックパッカーなどアウトドア愛好家をターゲットにしています。しかし、The Vergeの記者がタホ・リム・トレイルで実際に使用した結果、そのマーケティングが実情と乖離している点が浮き彫りになりました。本記事では、特にアウトドアでの安全性と信頼性の観点から、Coros Nomadの真価を検証します。
優れたバッテリー性能、しかし…
Nomadのバッテリー寿命は非常に優れており、Apple Watchと比較しても際立っています。165マイルのタホ・リム・トレイルで、充電なしで6日間以上、40時間以上のアクティビティ追跡が可能でした。これは長期間のアウトドア活動において大きな利点です。
しかし、アプリのデフォルト設定や機能は、マラソンプランの作成を促すなど、「週末の戦士」や都市部のランナー向けに設計されている印象が強く、真のアウトドア愛好家のニーズとは隔たりがあります。トレイルランニングやハイキングに特化したトレーニングインサイトが不足しており、ロードランナーのような詳細な分析は得られません。
アドベンチャーウォッチとしての課題
Coros Nomadは、そのマーケティングが謳う「アドベンチャーウォッチ」としての機能において、いくつかの重大な課題を抱えています。
- 表示情報の優先順位: デフォルトのハイキング表示は5画面にも及び、心拍数やCoros独自の指標が優先され、ペースや距離、標高といったハイカーが最も必要とする情報が埋もれていました。
- 視認性: ディスプレイとフォントの小ささから、一目で情報を確認することが難しく、特に移動中に頻繁に目を凝らす必要がありました。
安全機能の落とし穴
最も懸念されるのは、Nomadの安全機能がアウトドア環境で十分に機能しない可能性です。
- SOS機能の信頼性: NomadのマーケティングではSOS機能が宣伝されていますが、携帯電話のデータ通信がない場所では機能しません。これは、携帯電波が届かないことが多い真の「どこへでも行ける」アドベンチャー環境において、命に関わる重大な欠陥と言えます。
- 天気予報の課題: NomadはAppleのWeatherkit APIから天気データを取得するため、携帯電話のサービスがないとリアルタイムの天気予報を利用できません。内蔵の気圧計による嵐警報機能はありますが、デフォルトでオフになっており、メニューの奥深くに隠されているため、ユーザーが気づかない可能性があります。シエラネバダ山脈のような場所で突然の雷雨に遭遇するリスクを考えると、これは致命的な設計ミスです。
トレーニング機能のミスマッチ
Nomadのトレーニング機能も、アウトドアアスリートのニーズに完全には応えていません。
- 非カーディオ活動の追跡: 筋力トレーニングやヨガなど、カーディオ以外の活動の追跡は不正確で、トレーニング負荷や回復時間の指標が信頼できません。
- 「Rucking(ラッキング)」の欠如: バックパッキングの核心である「Rucking」(重りを背負って歩く)モードがありません。これは、Garminなどの競合他社が導入している機能であり、Corosの大きな見落としです。
- パーソナライズされたトレーニングプログラムの不足: スルーハイクのためのトレーニングプラン(例:VO2 maxの追跡、荷物重量の入力、マイル数や重量増加の提案)は提供されておらず、既存のプログラムはロードランナー向けに偏っています。
結論
Coros Nomadは、優れたバッテリー寿命と手頃な価格を持つ「良い時計」であることは間違いありません。しかし、そのマーケティングが謳う「どこへでも行ける、何でもできる」アドベンチャーウォッチとしての実力は、特に真のアウトドア環境における安全性と信頼性の観点から疑問符が付きます。SOS機能や天気予報が携帯電話のデータ通信に依存する点、そしてアウトドア特有のトレーニングニーズに対応しきれていない点は、セキュリティニュースとして注目すべき課題です。Corosが真にアウトドア愛好家をターゲットにするのであれば、これらの根本的な問題を解決し、より信頼性の高い機能を実装する必要があります。
元記事: https://www.theverge.com/tech/798613/coros-nomad-thru-hike-rucking
