保険業界のバックオフィスにAIを深く浸透させるLiberate AIが5000万ドルを調達

資金調達の概要

AIを活用して保険業務を自動化するスタートアップLiberate AIが、Battery Ventures主導のラウンドで5000万ドルを調達しました。これにより、同社の評価額は3億ドルに達し、保険会社や代理店へのAI導入をさらに加速させる計画です。

Liberate AIとは

2022年に設立されたサンフランシスコ拠点のLiberate AIは、損害保険会社向けにAIシステムを構築しています。特に、営業、サービス、請求処理に焦点を当てています。

  • 音声AIアシスタント「Nicole」:インバウンドおよびアウトバウンドコールを処理し、保険契約の販売やサービスリクエストに対応します。
  • 推論ベースのAIエージェント:既存のシステムと連携し、文脈を収集して応答を生成。ポリシーの見積もり、請求処理、契約内容の更新など、エンドツーエンドのタスクを人間を介さずに完了させます。SMSやメールにも対応し、顧客との多様なチャネルでのやり取りを自動化します。

AIによる保険業務の変革

Liberate AIのシステムは、すでに顕著な成果を上げています。同社によると、売上を平均15%増加させ、コストを23%削減しました。月間自動化処理件数は1万件から130万件へと大幅にスケールアップしています。

具体的な事例として、ハリケーン発生時の請求対応時間が30時間からわずか30秒に短縮されたことが挙げられます。また、AIエージェントは24時間365日の営業を可能にし、深夜や早朝といった時間帯でも顧客が保険を購入できるようになりました。

セキュリティとコンプライアンスへの配慮

保険業界は厳しく規制されており、AIの導入にはセキュリティとコンプライアンスが不可欠です。Liberate AIは、この点に特に注力しています。

  • 監査可能なインタラクション:すべてのAIによるやり取りは監査可能であり、コンプライアンス要件を満たすためのヒューマン・イン・ザ・ループ(Human-in-the-loop)のセーフガードが組み込まれています。
  • 監視ツール「Supervisor」:AIエージェントと顧客間のすべてのインタラクションを監視する内部ツール「Supervisor」を使用しています。このソフトウェアは、問題や異常を検出し、AIの応答が適切でない可能性がある場合には、人間の担当者にエスカレートします。

CEOのAmrish Singh氏は、「一つの業界、そしてその中で3つの特定のユースケースのみにサービスを提供することの利点は、より多くのガードレールを設置できることです」と述べており、AIの安全性と信頼性を確保するための同社の取り組みを強調しています。

今後の展望

今回のシリーズB資金は、Liberate AIの推論能力をさらに強化し、より広範な保険会社への導入を支援するために活用されます。同社はこれまでに総額7200万ドルを調達しており、約50名の従業員を擁しています。


元記事: https://techcrunch.com/2025/10/15/liberate-bags-50m-at-300m-valuation-to-bring-ai-deeper-into-insurance-back-offices/