「新メディア」は右翼メディアか?情報統制と報道の未来

「新メディア」の定義の変化と政治的利用

近年、特に米国の政治情勢において「新メディア」という言葉の定義が大きく変化しています。かつてはオンラインで革新的な報道を行うメディアを指しましたが、現在では共和党関係者の間で「右翼メディア」の婉曲表現として使われることが増えています。この変化は、政府が特定のメディアに排他的なアクセスを許可し、情報発信をコントロールしようとする動きと密接に関連しています。

政府による「新メディア」の活用と情報統制

トランプ政権時代から、ホワイトハウスは「新メディア」専用の記者席を設け、右翼系ポッドキャスターに閣僚との面会機会を提供する「ポッドキャスト・ロウ」を導入してきました。当時の報道官は、これを「レガシーメディア」への対抗措置と公言しています。また、国土安全保障長官がMAGA系ストリーマーにのみ施設への独占的なアクセスを許可した事例も報告されており、これは政府が特定のイデオロギーを持つメディアを優遇し、情報流通を操作しようとする明確な意図を示しています。

国防総省における報道規制の強化

国防長官ピート・ヘグセス氏の就任後、国防総省では「ローテーションプログラム」が導入され、従来の主要メディアの記者席がOne America News、New York Post、Breitbartといった右翼系メディアに置き換えられました。さらに、国防総省は報道機関に対し、国防総省が許可しない情報の公開や、未承認の事項に関する質問を禁じる新たな規則への同意を求めています。これは、報道の自由を著しく制限し、政府による情報統制を強化する動きとして、Fox Newsを含む多くの報道機関から強い抗議を受けています。

バリ・ワイス氏とCBSニュース買収の波紋

「新メディア」の台頭は、メディア業界の構造にも大きな影響を与えています。保守系論客バリ・ワイス氏が編集長を務める「The Free Press」がパラマウント社に1億5000万ドルで買収され、ワイス氏がCBSニュースの責任者に就任したことはその象徴です。しかし、この動きはメディア批評家の間で「ガラスの崖」(女性が経営難の企業トップに就任し、失敗しやすい状況に置かれる現象)として議論されています。ワイス氏のテレビ報道経験の不足や、彼女の政治的スタンスがCBSニュースの独立性や信頼性に与える影響について懸念が表明されており、企業によるメディア買収が報道の公平性に与える潜在的なリスクが浮き彫りになっています。

「新メディア」の企業化とジャーナリズムの未来

かつて「企業コングロマリットが報じない真実を伝える」と謳っていた「The Free Press」のような「新メディア」が、今やその企業コングロマリットの一部となることで、その存在意義が問われています。この変化は、独立したジャーナリズムが企業や政治的圧力にどのように対応していくかという、メディアの未来における重要な課題を提起しています。また、CBSニュースの従業員に対して日々の業務内容を報告するよう求めるメモが送られたことは、大規模な人員削減の兆候と受け止められており、メディア業界全体における不安定な状況を示唆しています。

結論:情報環境の変容と民主主義への影響

「新メディア」の定義の変容、政府による特定のメディアへの優遇、報道規制の強化、そして企業によるメディア買収は、現代の情報環境が大きく変化していることを示しています。これらの動きは、報道の自由と独立性を脅かし、国民が多様で信頼できる情報にアクセスする権利を侵害する可能性を秘めています。民主主義社会において健全な情報流通を維持するためには、これらの動向を注意深く監視し、メディアの透明性と説明責任を確保するための議論が不可欠です。


元記事: https://www.theverge.com/column/799904/new-media-is-just-right-wing-media