Amazon、電動カーゴ車両で配送網を強化
Amazonは、RivianからスピンオフしたマイクロモビリティスタートアップAlsoから、数千台のペダルアシスト電動カーゴ車両を導入することを発表しました。この車両は、400ポンド(約180kg)以上の荷物を積載可能でありながら、自転車レーンも利用できるコンパクトさが特徴です。AmazonはAlsoと複数年にわたる提携を結び、欧州および米国での配送ニーズに合わせて車両をカスタマイズする予定です。新型のTM-Qペダルアシスト電動クワッド車両は、2026年に運用開始される見込みです。
Rivianとの密接な連携と技術的背景
Alsoは新興企業であるものの、その幹部陣はAmazonと長年の関係を築いています。親会社であるRivianはAmazonの出資を受けており、すでに25,000台以上の電動配送バンをAmazonに供給しています。Rivianの創設者兼CEOであるRJ Scaringe氏は、電動配送バンプログラムで得た知見が今回のプロジェクトに活かされていると述べています。Rivianのフリート管理ポータルを通じて、大型の電動配送バンとAlso製品の両方を一元的に管理できる点は、効率性と運用セキュリティの向上に寄与すると考えられます。
Alsoは元々Rivian内の「スカンクワークス」(秘密開発部門)として発足し、今年初めに独立。Eclipse Venturesから1億500万ドルの資金を調達しました。RivianはAlsoの少数株主として残り、Scaringe氏も取締役を務めるなど、密接な関係を維持しています。これにより、AlsoはRivianの技術、小売網、規模の経済を活用できる利点があります。
スマート機能がもたらすセキュリティの側面
TM-Q車両は、Alsoの電動自転車TM-Bと多くのDNAを共有しており、特にドライブトレインやペダルバイワイヤーシステムは共通です。注目すべきは、車両に搭載された5インチの円形タッチスクリーンです。このスクリーンはナビゲーション、メディアコントロール、フィットネス統計、アシストレベルを表示し、Alsoアプリと同期することで、バッテリー充電状況の確認、ソフトウェアアップデートのダウンロード、そして車両のセキュリティ管理を可能にします。
これらのスマート機能は利便性を高める一方で、データプライバシーとサイバーセキュリティに関する新たな課題を提起します。車両から収集される位置情報や運用データ、そしてアプリを通じたソフトウェアアップデートのプロセスは、不正アクセスやデータ漏洩のリスクを考慮した厳格なセキュリティ対策が不可欠です。また、タッチスクリーンによるロック・アンロック機能は、物理的なセキュリティとデジタルセキュリティの連携が重要であることを示唆しています。
バッテリー技術も特徴的で、ポータブルかつ取り外し可能な設計となっており、将来的にはバッテリー交換ステーションの導入も計画されています。商用TM-Qには、ロジスティクス、配送、充電を管理する専用ソフトウェアが搭載され、フリート全体の効率的な運用を支援します。
都市配送の進化とセキュリティへの配慮
Alsoの小型電動カーゴ車両は、高密度な都市部での配送に理想的であり、Amazonはすでに米国と欧州で70以上のマイクロモビリティハブを運営しています。この新しい配送モデルは、ラストマイル配送の効率化と環境負荷低減に貢献する一方で、多数の小型車両とそれらを管理するシステム全体のセキュリティが重要になります。
Alsoは商用顧客だけでなく、消費者向けのTM-Qも発表しており、これはカーゴ部分をベンチシステムに置き換えたものです。Scaringe氏が「新しい『トップハット』を開発するコストは、自動車では10億ドルかかるが、このプラットフォームでははるかに少ない」と述べたように、柔軟なプラットフォーム設計は将来的な多様な用途展開を可能にします。この柔軟性は、異なる用途や環境に応じたセキュリティ要件への適応という観点からも注目されます。
AmazonとAlsoの提携は、電動マイクロモビリティが物流の未来をどのように形作るかを示す一例であり、その進化の過程で技術革新とセキュリティ対策のバランスが常に問われることになるでしょう。