テスラの最新業績とマスク氏のビジョン
2025年第3四半期、テスラは記録的な販売台数を達成し、自動車事業の売上高は212億ドルに達しました。しかし、純利益は前年同期比で37%減の14億ドルにとどまり、自動車事業の回復とは裏腹に、収益性の課題が浮き彫りになりました。CEOのイーロン・マスク氏は、現在の自動車中心のビジネスから、「ロボット軍」と完全自動運転車(FSD)を中心としたAI駆動型ビジネスへの転換に注力しており、このビジョンが同社の戦略の最前線にあります。
利益圧迫の要因とAIへの大規模投資
テスラの利益が減少した主な要因の一つは、営業費用の大幅な増加です。AIおよび研究開発プロジェクトへの投資、そして約2億4000万ドルの「リストラ費用」(Dojoスーパーコンピュータープロジェクトの閉鎖に関連する可能性も指摘されています)により、営業費用は前年同期比で50%増加しました。さらに、関税による約4億ドルの影響も利益を圧迫しています。マスク氏は、テスラがAIを現実世界に導入する「極めて重要な転換点」にあると述べ、FSDとロボタクシーの「大規模な拡大」を通じて輸送の性質を根本的に変えることを目指しています。
「ロボット軍」Optimusと将来への賭け
マスク氏は、テスラの未来を自律走行車の広大なネットワークと、ヒューマノイドロボット「Optimus」に賭けています。Optimusは「史上最高の売上を記録する製品になる」とマスク氏は豪語していますが、2026年第1四半期に第3バージョンの生産を開始する予定であるものの、初期生産では課題に直面していると報じられています。マスク氏はOptimusの開発を「信じられないほど困難な課題」と認めつつも、貧困のない世界や最高の医療へのアクセスを可能にするという壮大なビジョンを語っています。これらのAI、ロボティクス、そして2人乗り「サイバーキャブ」の生産開始を含むプロジェクトへの投資により、2026年の設備投資は「大幅に増加する」見込みです。
報酬パッケージと「ロボット軍」の制御
テスラは、マスク氏に1兆ドル相当の株式報酬パッケージを付与する提案を進めており、数週間後の年次株主総会で投票が行われます。主要なアドバイザーグループがこの報酬パッケージに反対を推奨しているにもかかわらず、マスク氏は承認される可能性が高いと見ています。マスク氏は、この報酬パッケージがもたらす議決権の制御が、金銭よりも重要であると強調しています。彼は、報酬パッケージが承認されなければテスラを去る可能性を示唆し、「ロボット軍」の制御を失うことへの強い懸念を表明しています。これは、AI技術の進化と企業統治の未来において、「制御」がいかに重要な要素となるかを浮き彫りにしています。