Bored Ape Yacht Club、メタバース「Otherside」で再始動:デジタル資産の未来とセキュリティへの示唆

Bored Ape Yacht Club、メタバース「Otherside」で再始動

かつて一世を風靡したNFTコレクション「Bored Ape Yacht Club(BAYC)」の運営元であるYuga Labsが、NFTブームの沈静化にもかかわらず、新たな大規模デジタルプロジェクト「Otherside」でメタバース市場への本格参入を発表しました。同社は2022年の4億5000万ドルの資金調達時にその構想を明かしていましたが、この度、11月12日に正式ローンチすることが明らかにされました。

Yuga Labsの最高製品責任者であるMichael Figge氏は、「これはこの分野でこれまで試みられた中で最も野心的なプロジェクトの一つであり、ついに形になり始めている」と述べています。Othersideは、RobloxやFortniteのようなユーザー生成コンテンツ(UGC)プラットフォームに似ていますが、その核には暗号資産(クリプト)とブロックチェーン技術が据えられています。

デジタル資産と分散型エコシステムのセキュリティ

Othersideでは、ユーザーはNFTをアバターとして使用し、NFTの土地を所有し、ブロックチェーンベースの通貨を利用します。Yuga Labsは、この仮想世界を「相互運用可能」「ゲーミファイされた」「分散型」なものとして構築することを目指しており、特に「分散型」という側面は、デジタル資産の所有権とセキュリティにおいて重要な意味を持ちます。

Figge氏は、クリエイターがYuga Labsの世界外でもデジタル資産を所有し、移動できる「クリエイターエコシステム」の構築に期待を寄せています。これは、従来のプラットフォームと比較して、クリエイターが自身のデジタル資産に対するより強固な所有権と管理権を持つことを示唆しており、同時に資産の移動に伴うセキュリティプロトコルや、詐欺・盗難からの保護が極めて重要となります。

また、Amazonとの提携により「Boximus」と呼ばれる共同ブランドの「トークン化された資産」アバターも導入されます。これらのアバターは費用がかかりますが、ブロックチェーンベースであるため、ユーザーは所有するアバターを再販できるとされており、これは従来のゲーム内スキンとは一線を画す、新たなデジタル経済圏の可能性を示しています。

新規ユーザーの参入と潜在的リスク

Othersideは、暗号資産ウォレットでのログインに加え、メールアドレスなど従来の手段での参加も可能とすることで、参入障壁を低く設定しています。Figge氏は、「Othersideを試すための障壁は非常に低いべきだと考えている。なぜなら、一度試せば、実際にデジタル資産を所有することがどのようなものかを体験する素晴らしい方法になるからだ」と語っています。

しかし、この「低い参入障壁」は、暗号資産やブロックチェーン技術に不慣れな新規ユーザーを、潜在的なセキュリティリスクに晒す可能性もはらんでいます。デジタル資産の管理、ウォレットのセキュリティ、フィッシング詐欺への対策など、ユーザーへの適切な教育とプラットフォーム側の強固なセキュリティ対策が不可欠となるでしょう。

メタバースの現状と今後の課題

記事では、筆者が体験したOthersideの初期バージョンについて、その「空虚さ」やゲーム性の欠如に対する懐疑的な見方も示されています。現在のところ、主にソーシャルチャットルームとしての機能が中心であり、FortniteやRobloxのような成功を収めるには、より魅力的なゲーム体験やコンテンツの充実が求められると指摘されています。

メタバースが普及するにつれて、デジタル資産のセキュリティ、ユーザーのプライバシー保護、プラットフォーム上での不正行為への対策など、新たなセキュリティ課題が浮上することは避けられません。Othersideがこれらの課題にどのように対応し、安全で魅力的な仮想世界を構築していくのか、今後の動向が注目されます。


元記事: https://www.theverge.com/tech/806492/bored-ape-yacht-club-bayc-crypto-metaverse-otherside-yuga-labs