戦略的提携:無料決済の収益化への挑戦
Flipkartのフィンテック部門であるSuper.moneyは、インドの大手商業銀行であるKotak Mahindra銀行との戦略的提携を発表しました。この提携は、インドの無料デジタル決済システムであるUPI(Unified Payments Interface)に収益性をもたらすことを目的としており、UPI決済、貯蓄、担保付きクレジットを統合した単一のアカウントを提供します。
Super.moneyは、今後12ヶ月で約200万枚の担保付きクレジットカードの発行を目指しており、その約60%は初めて借り入れを行うユーザーを対象としています。2年以内には500万枚の発行を目標に掲げています。現在1,000万人のアクティブユーザーを抱えるSuper.moneyは、このKotak銀行との提携が来年の収益の約10%に貢献し、2026年までの黒字化を目指すとしています。
無料UPI決済の課題とSuper.moneyの革新的な解決策
インド政府が支援するUPIは、即時銀行振込を無料で普及させ、月間190億件以上の取引を処理するまでに成長しました。しかし、この成功はフィンテック企業にとって収益化の余地をほとんど残していません。インドの規制当局は、通常報酬やクレジットプログラムの資金源となる加盟店手数料を認めていないためです。
Super.moneyのCEOであるPrakash Sikaria氏は、「我々は純粋な決済ユースケースを解決するためにUPIを行っているわけではない。UPIを通じて、顧客を獲得し維持するための興味深いクロス金融サービスプレイを構築している」と述べています。同社の戦略は、担保付きカードと貯蓄口座を活用してインセンティブを再導入することで、手数料無料の決済システムの上に実行可能なビジネスモデルを構築するテンプレートを提供します。
「3-in-1 Super Account」による金融セキュリティと包摂の促進
Kotak Mahindra銀行との提携により導入される「3-in-1 Super Account」は、貯蓄口座、UPI決済、そして定期預金に裏打ちされた担保付きクレジットカードを組み合わせたものです。このアカウントは、特に初めて借り入れを行う人々への信用アクセスを拡大することを目的としています。
- アカウント開設には最低1,000ルピー(約11ドル)の定期預金が必要です。
- 預金には利息がつき、すべての取引でキャッシュバックが提供されます。
- 所得証明が不要な、預金担保型のクレジットライン「UPI-on-credit」機能も含まれています。
Sikaria氏は、担保付きカードがアンカー製品として選ばれた理由について、無料のUPIシステムに適合しつつ、プラットフォームが本来サポートしていなかった報酬やキャッシュバックを可能にするためだと説明しています。これにより、金融包摂を促進しながらも、担保によってリスクを効果的に管理するという、セキュリティ面でも重要なアプローチが実現されます。
成長戦略と将来展望
2024年6月にローンチされたSuper.moneyは、すでに月間約300万ドルの収益を上げており、年間換算で約3,600万ドルに達しています。同社はインドのトップ5のUPIプラットフォームの一つとして浮上し、8月までの4ヶ月間、月間2億件以上の取引を処理しています。収益の約80%は個人ローンから、10%はクレジットカードから、残りの10%は請求書払いなどの決済製品から得られています。
FlipkartはSuper.moneyの事業開始に約5,000万ドルを投資しており、事業規模の拡大に伴い、将来的には外部投資家からの追加資金調達も計画しています。Sikaria氏は、Google PayやPhonePeのような大衆市場の決済プレイヤーとは異なり、インドのトップ1,000万〜3,000万人のユーザー層に焦点を当て、堅固で収益性の高い担保付きカード事業を構築することを目指していると強調しています。
