Inception、コードとテキスト向け拡散モデルで巨額資金調達
AIスタートアップのInceptionが、コードとテキストを生成する拡散モデルの開発で5000万ドルのシード資金を調達しました。この資金調達はMenlo Venturesが主導し、著名なAI研究者であるAndrew Ng氏やAndrej Karpathy氏もエンジェル投資家として参加しています。
スタンフォード大学のStefano Ermon教授が率いるInceptionは、画像生成AIで成功を収めている拡散モデルを、より広範なタスク、特にソフトウェア開発に応用することを目指しています。
拡散モデルとは?既存AIモデルとの違い
拡散モデルは、Stable DiffusionやMidjourneyのような画像生成AIの基盤技術であり、反復的な洗練を通じて出力を生成します。これは、GPT-5やGeminiのような既存のテキストベースAIサービスで主流の自己回帰モデルとは根本的に異なります。
自己回帰モデルが単語を順次予測するのに対し、拡散モデルはより全体的なアプローチを取り、応答の全体構造を段階的に修正して望ましい結果に近づけます。この特性が、大量のテキスト処理やデータ制約がある場合に優れた性能を発揮する可能性が指摘されています。
ソフトウェア開発特化型「Mercury」モデルの登場
Inceptionは、資金調達と同時に、ソフトウェア開発向けに設計された新しいバージョンのモデル「Mercury」を発表しました。MercuryはすでにProxyAI、Buildglare、Kilo Codeといった複数の開発ツールに統合されています。
Ermon教授は、拡散アプローチがAIモデルの最も重要な指標であるレイテンシ(応答時間)と計算コストを大幅に削減できると強調しています。彼は「これらの拡散ベースLLMは、現在他の誰もが構築しているものよりもはるかに高速で効率的です」と述べています。
セキュリティと開発効率への影響
拡散モデルの並列処理能力は、自己回帰モデルが操作を順次実行する必要があるのに対し、多くの操作を同時に処理できるため、複雑なタスクにおけるレイテンシを大幅に低減します。Inceptionのモデルは、1秒あたり1,000トークンを超えるベンチマークを達成しており、これは既存の自己回帰技術では不可能な速度です。
この高速性と効率性は、特に大規模なコードベースを扱う際に大きな利点となります。これにより、開発プロセスが加速され、コードの品質向上や脆弱性分析の迅速化など、間接的にセキュリティ面での恩恵も期待されます。開発者はより迅速にコードを生成、テスト、デプロイできるようになり、潜在的なセキュリティリスクの特定と修正も加速される可能性があります。
今後の展望
Inceptionの取り組みは、AIモデルのアーキテクチャにおける新たなイノベーションを示唆しています。拡散モデルがコード生成や分析の分野でその真価を発揮すれば、ソフトウェア開発のあり方を根本から変え、より安全で効率的な開発環境の実現に貢献するかもしれません。
