新しいインターネットの潮流:インディーウェブの台頭
デジタル世界がアルゴリズムとAIに支配されつつある中、かつての「奇妙」でパーソナルなインターネットを取り戻そうとする動きが活発化しています。それは「インディーウェブ」と呼ばれ、ユーザーが主導する創造性とコミュニティを重視する新しい潮流を生み出しています。
GeoCitiesからNeocitiesへ:インディーウェブの起源
インディーウェブのルーツは、2009年に米国で閉鎖された無料ウェブホスティングサービス、GeoCitiesに遡ります。GeoCitiesは、パーソナルなHTMLウェブサイトの宝庫であり、インターネットの多様性を象徴していました。その精神を受け継ぎ、2013年に開発者カイル・ドレイク氏が「Neocities」を立ち上げました。これはGeoCitiesの精神を現代に蘇らせたサービスで、誰もが無料でHTMLウェブサイトを作成できます。Neocitiesは、アルゴリズムではなく人間によるつながりを重視するインターネットの復興の中心となっています。
現代のインディーウェブ:反AIと多様な表現
過去数年で、インディーウェブ運動は急速に勢いを増しています。Neocitiesに加え、2024年に開始された「Nekoweb」も人気を集めています。これらのプラットフォームでは、懐かしい90年代風のデザインと最新の話題が混在し、特にAIやアルゴリズム、ソーシャルメディアの依存症からの脱却を求める声が大きいです。NeocitiesのAIアシスタント「Penelope」の導入に対するユーザーの反発は、インディーウェブにおけるAIへの強い不信感を浮き彫りにしました。
インディーウェブのサイトデザインは、意図的に洗練された現代のミニマリズムとは一線を画しています。ピクセルアートのGIF、奇抜な背景、アニメーションが多用され、「最高のウェブサイト」ではなく、「自分が作りたいものを作る」という創造性が前面に出ています。
コミュニティの再構築と多様性の受容
ソーシャルメディアとは異なり、インディーウェブは意図的なコミュニティ形成を重視します。かつての「ウェブリング」や「ウェブガーデン」が復活し、ユーザーは互いのサイトを訪問し、つながりを深めています。特にアーティストやLGBTQ+コミュニティがインディーウェブに集まっており、AIによるコンテンツ生成やソーシャルメディアのモデレーションの変化によって疎外感を感じていた人々にとって、安全な表現の場を提供しています。
インディーウェブの未来:分散化と創造性の維持
今後数年間でソーシャルメディアが変化するにつれて、より多くの人々がインディーウェブに注目する可能性があります。検閲やAI生成コンテンツの増加は、人々をより分散化されたインディーウェブへと向かわせる要因となるでしょう。AIがコーディングを容易にする一方で、インディーウェブはHTML、CSS、JavaScriptを学ぶ人々のコミュニティを維持する役割も果たします。「自分でコードを書く」という行為は、単なる機能性だけでなく、ウェブサイトにパーソナルな価値を与えることにつながるからです。
また、インディーウェブの成長は、ソーシャルメディアの「デフォルトハブ」の終焉とも関連しています。以前のTwitterのような中心的なプラットフォームがなくなったことで、人々はより多様なオンライン空間を受け入れやすくなっています。サイバーいじめのような問題への対策は今後の課題ですが、分散化された性質はコンテンツ管理において、ある種の自由度も提供します。
インディーウェブは、ブラウザゲームの復活の兆しも見せており、Itch.ioのようなプラットフォームや個人的なウェブページでのシンプルなゲームが、かつてのフラッシュゲームやバーチャルワールドのノスタルジーを呼び起こしています。
さらに詳しく
- Adi Robertsonによる『Hypnospace Outlaw』のレビュー:90年代インターネットをシミュレートしたゲーム。
- GeoCities創設者のインタビュー:Jody SerranoによるGizmodoの記事。
- PolygonのNeocitiesに関する特集記事(2022年):ゲームコミュニティに焦点を当てる。
- Sara Davis Bakerのビデオエッセイ「The Internet Used to be a Place」:インターネットの変化を考察。
元記事: https://www.theverge.com/column/829831/indie-web-geocities-neocities
