伝説のシンセ「Absynth」が16年の時を経て復活!MPE対応、Brian Enoらのプリセットも

はじめに

かつてカルト的な人気を誇ったソフトウェアシンセサイザー「Absynth」が、16年の沈黙を破り、バージョン6として帰ってきました。Native Instrumentsは、2022年に開発終了を発表していたこの名機を、オリジナルデザイナーのBrian Clevinger氏とのコラボレーションにより復活させました。

Absynth 6は、MPE(MIDI Polyphonic Expression)への対応や、Brian Eno、Kaitlyn Aurelia Smithといった著名アーティストによる新たなプリセットを搭載し、その「奇妙で前衛的」なサウンドメイキングの可能性をさらに広げています。

革新的なシンセシスエンジンと変幻自在のエンベロープ

Absynth 6の核となる部分は、前バージョンから受け継がれた堅牢なセミモジュラー仮想インストゥルメントとしての特性です。伝統的な減算合成はもちろん、FM、サンプラー、グラニュラーエンジンなど、複数のシンセシスエンジンを搭載しており、ユーザーは独自の波形を描いて作成することも可能です。これにより、Omnisphere、Serum、Pigments、Native InstrumentsのMassive Xといった「スーパーシンセ」と肩を並べる存在となっています。

中でもAbsynthを際立たせているのが、その圧倒的なエンベロープシステムです。一般的なADSRやDAHDSRエンベロープとは異なり、最大68ポイントのエンベロープを設定可能。これらはループ、シングルショット、または時間同期させることができ、時間とともに複雑に変化するサウンドスケープの生成に貢献します。

MPE対応と8チャンネルサラウンドサウンド

Absynth 6の新たな進化として注目すべきは、MPEへの対応です。Push 3やRoli Seaboardのような互換コントローラーを使用することで、より繊細で表現豊かな演奏が可能になります。例えば、鍵盤を強く押したり指をスライドさせたりすることで、フィルターを開いたり、新しいオシレーターを加えたり、特定の音だけAetherizerグラニュラーエフェクトのフィードバックを調整したりと、音符ごとにサウンドをモーフィングさせることができます。

また、最大8チャンネルのサラウンドサウンドに対応したことも特筆すべき点です。これはソフトウェアシンセとしては非常に珍しく、映画音楽やアンビエント作品を手掛けるクリエイターにとって、Absynthをさらに魅力的なツールにするでしょう。

AIアシストのプリセットエクスプローラーと価格

Absynth 6には、新たなAIアシストのプリセットエクスプローラーが導入されました。これは、従来のリスト形式ではなく、サウンドの「雰囲気」によって分類されたポイント群として表示される独特のインターフェースです。2,000以上のプリセットライブラリからインスピレーションを探すのに役立つ一方で、ユーザーによっては試聴済みかどうかの管理が難しいと感じるかもしれません。

サウンドを素早く調整するために、パッチには最大8つのマクロコントロールが用意されており、「Mutate」ボタンを使えば読み込んだサウンドに半ランダムな変更を加え、新しいバリエーションを生成することも可能です。

Absynth 6は新規ユーザー向けに199ドルで提供され、Absynth 5の既存ユーザーは99ドルでアップグレードできます。

まとめ

16年ぶりに復活したAbsynth 6は、その特徴的なサウンドデザインと革新的な機能をさらに発展させました。MPE対応、8チャンネルサラウンドサウンド、そして新たなプリセットの追加により、音楽制作の可能性を広げる強力なツールとして、再び多くのクリエイターを魅了することでしょう。


元記事: https://www.theverge.com/entertainment/844432/native-instruments-absynth-6-mpe-brian-eno