EV税額控除終了前の駆け込み需要でテスラが記録更新
電気自動車(EV)大手テスラは、連邦EV税額控除の期限切れを前に、過去最高の四半期販売台数を記録しました。これは、消費者が7,500ドルの税額控除の恩恵を受けようと駆け込み購入したことが主な要因です。テスラは過去3ヶ月間で497,099台の車両を納入し、前四半期比で29%増、前年同期比で約7%増となりました。この記録的な販売は、EV市場全体の動向にも影響を与え、Cox Automotiveは今四半期の米国におけるEV販売が全車両販売の10%に達すると予測しています。
テスラの直面する課題と戦略転換
今回の記録的な販売にもかかわらず、テスラは過去1年半にわたり販売成長が停滞しており、世界的な納車台数は2年連続で減少する見込みでした。これにより、同社の業界トップの利益率にも影響が出ています。主な要因としては、サイバートラックを除けば長年真に新しいモデルを投入していないこと、そしてサイバートラック自体もGMCハマーEVに販売台数で劣るなど不振が続いていることが挙げられます。さらに、イーロン・マスクCEOの政治的行動、特にドナルド・トランプ氏への支援や新政権での連邦機関・プログラムへの大幅な削減は、テスラの企業イメージに影を落としています。
マスクCEOは現在、自動車販売への関心を失いつつあるようで、同社は自動運転技術や人型ロボットといった分野に注力する姿勢を強めています。マスク氏への1兆ドル規模の報酬パッケージも、これらのプログラムの成功に大きく連動していると報じられています。
EV市場の将来とテスラの展望
EV税額控除の終了と、トランプ政権のクリーンエネルギーに対する否定的な姿勢は、米国のEV市場の短期的な見通しを暗くしています。これにより、多くの既存自動車メーカーが新たなEV計画を延期または中止する動きを見せており、これは皮肉にもテスラが市場シェアを取り戻す機会となる可能性も秘めています。
テスラは、年内に低価格版のモデルY SUVを発表する予定で、価格帯は3万ドル台前半になると見られています。これが、税額控除がない市場で消費者の購買意欲を刺激するかが注目されます。一方、フォードやゼネラルモーターズといった他の主要自動車メーカーは、連邦補助金がない市場でEVの競争力を維持するため、特定のリース契約においてインセンティブを提供することで対応しています。
結論
テスラの過去最高の販売台数は、政策変更が市場に与える影響の大きさを浮き彫りにしました。しかし、税額控除の終了、政治的逆風、そしてテスラ自身の戦略転換は、EV市場全体、特に米国におけるEVの普及と成長の経済的安全性に不確実性をもたらしています。今後のテスラの動向と、政策変更がEV業界に与える長期的な影響が注視されます。
元記事: https://techcrunch.com/2025/10/02/tesla-has-its-best-sales-quarter-of-2025-as-ev-tax-credit-expires/