Reddit投稿から生まれたAIクラウドの雄、RunpodがARR1.2億ドルを突破
AIクラウドスタートアップのRunpodが、創業からわずか4年で年間経常収益(ARR)1.2億ドルという驚異的なマイルストーンを達成しました。創業者であるZhen Lu氏とPardeep Singh氏がTechCrunchに語ったこの成功は、Redditへの投稿から始まり、わずか9か月で100万ドルの収益を上げ、後に2,000万ドルのシードラウンドを調達するという、まさに異例の軌跡を辿っています。
彼らの物語は、優れた製品と適切なタイミングが組み合わされば、いかに大きな成果を生み出すかを示す好例です。デル・テクノロジーズ・キャピタルのパートナーであるVCのRadhika Malik氏がRedditの投稿を見て接触したこと、そしてHugging Faceの共同創業者であるJulien Chaumond氏が製品のユーザーとしてサポートチャットを通じて投資を決めたことは、その象徴的なエピソードです。
イーサリアム採掘からAIサーバーへ:創業のきっかけ
Runpodのアイデアは、2021年後半に遡ります。Comcastで企業開発者として働いていたLu氏とSingh氏は、イーサリアム採掘という趣味に飽き足らなくなっていました。数万ドルを投じて構築した採掘リグを無駄にしないため、彼らはGPUをAIサーバーに転用することを決意します。この決断は、ChatGPTやDALL-E 2が登場する以前のことであり、その先見の明が伺えます。
この転用作業の過程で、彼らは「GPUを扱うソフトウェアスタックがひどい」という共通の問題意識を抱きます。Lu氏は、この開発体験を「ホットなゴミ(hot garbage)」と表現し、この問題解決こそがRunpod誕生の原動力となりました。
開発者コミュニティとの共創:Redditでのベータテスト
2022年初頭、彼らはRunpodを立ち上げます。Runpodは、速度、簡単に構成可能なハードウェア(サーバーレスオプションを含む)、API、CLI、Jupyter notebooksなどの開発ツールを重視したAIアプリケーションホスティングプラットフォームです。しかし、初めての創業者として、マーケティングの方法を知らなかった彼らは、Lu氏の「Redditに投稿しよう」というシンプルなアイデアを実行します。
AI関連のサブレディットに「フィードバックと引き換えにAIサーバーへの無料アクセス」を提供すると、これが功を奏します。ベータテスターから始まり、やがて有料顧客を獲得。わずか9か月で、彼らはそれまでの仕事を辞め、100万ドル(約1.5億円)の収益を達成しました。
急成長と資金調達:データセンター提携からVCの注目まで
急成長には新たな課題が伴いました。ビジネスユーザーが「自宅の地下室にあるサーバーではビジネス用途に耐えられない」と訴え始めたのです。VCからの資金調達を考えていなかった彼らは、当初、データセンターとのレベニューシェアパートナーシップを結び、容量を拡大しました。しかし、常に一歩先を行く必要があり、GPUの供給が止まればユーザーが離れていくというプレッシャーに直面していました。
その間にも、RedditやDiscordでのユーザーベースは拡大し、特にChatGPTの登場後は爆発的に増加しました。これによりVCからの注目が集まり、Radhika Malik氏がRedditで見つけて接触したことが、彼らにとって初めてのVCとの会話となりました。Malik氏は、創業者がVCの考え方を理解するのを助け、後の資金調達へと繋がっていきます。
そして2024年5月、RunpodはデルとインテルのVC部門が共同主導し、Nat Friedman氏やChaummond氏も参加する2,000万ドルのシードラウンドを成功させました。
現在の規模と競争環境、そして未来の展望
現在、Runpodは50万人の開発者を顧客に持ち、個人からフォーチュン500企業まで幅広い層に利用されています。彼らのクラウドは世界31の地域に展開されており、Replit、Cursor、OpenAI、Perplexity、Wix、Zillowなどの著名企業がユーザーとして名を連ねています。
競争環境は激しく、AWS、Microsoft、Googleといった主要クラウドプロバイダーに加え、CoreWeaveやCore ScientificのようなAI特化型クラウドも存在します。しかし、Runpodは「開発者中心のプラットフォーム」としての独自性を強調しています。彼らは、プログラマーが将来的にAIエージェントの作成者や運用者へと進化すると見ており、その新しい世代の開発者が「Runpod上で育つこと」を目標としています。
