導入:SNS投稿が国家の意思決定を左右する時代
オレゴン州が連邦政府を相手取って起こした州兵の動員に関する訴訟において、ドナルド・トランプ前大統領のTruth Socialへの投稿が法廷での主要な争点となっています。この異例の事態は、インターネット上の「認識」が現実の政策決定にどれほど影響を与えるべきかという、現代社会における重要な問いを投げかけています。
訴訟の背景と法的根拠
事の発端は、オレゴン州知事ティナ・コテック氏との電話会談後、トランプ氏がTruth Socialで「なぜ州知事は州兵派遣に反対するのか理解できない」と投稿したことにあります。その数時間後、ピート・ヘグセス国防長官はオレゴン州兵200名の連邦化を命じ、これに対しオレゴン州は即座に訴訟を提起しました。
訴訟の法的根拠は、大統領が州兵を招集できる状況を定める米国法典第10編第12406条にあります。この条文には主に3つの要件があります:
- 外国勢力による侵攻の場合
- 反乱の場合
- 大統領が「通常の部隊では合衆国の法律を執行できない」場合(第3項)
裁判では主に第3項が焦点となりましたが、連邦司法省(DOJ)の弁護士は、ポートランドでの抗議活動が「合衆国の武力に対する意図的な組織的抵抗」であり、反乱に該当すると主張しました。
トランプ氏のSNS投稿と政府側の主張
金曜日の公聴会で、カリン・イマーガット判事が大統領の決定の主要な情報源を尋ねた際、DOJの副司法次官補エリック・ハミルトン氏は、「最も重要な決定は、彼がTruth Socialで行った投稿に反映されている」と述べました。具体的には、9月27日と10月1日の2つの投稿が引用されました。
- 9月27日の投稿:「戦争で荒廃したポートランド」を「国内テロリスト」から守るため、「全面的な武力」による部隊招集を承認するとした。
- 10月1日の投稿:「オレゴン州で法執行機関が法律を執行できていない」ため、州兵を「動員し、任務に就かせた」と明記した。
ハミルトン氏は、ICE施設への「悪質で残酷な」攻撃、投石、フラッシュライトによる目くらまし、ICE車両の位置情報のオンライン投稿、ICE職員のドクシング、そして敷地へのバリケード設置などを挙げ、ポートランドが「反乱寸前」であると主張しました。注目すべきは、彼が説明した「攻撃」の多くが、インターネット上の投稿に関するものであった点です。
オレゴン州側の反論:「認識と現実の乖離」
オレゴン州のスコット・ケネディ上級副司法長官は、DOJの反乱の基準は広範すぎると反論し、「ほとんどの抗議活動は権威に反対するものだ」と述べました。また、10月1日の投稿は、ヘグセス長官がメモを発行した9月28日よりも後であるため、考慮すべきではないと指摘しました。
ポートランド市のキャロライン・トゥルコ上級副市弁護士は、「大統領がポートランドで起きていると認識していることと、実際に現地で起きていることは異なる」と強調しました。彼女は、大統領の投稿を「事実の誠実な評価を欠いた、曖昧で扇動的な誇張」と呼び、「最終的には、認識と現実の問題だ」と述べました。彼女は、ポートランド警察が連邦保護局と連絡を取り合っていた際、「問題なし、懸念なし」と報告されていたことを示す法執行機関の宣言書を引用しました。
2020年の影と裁判所の役割
公聴会の多くは、2020年の抗議活動の影に覆われていました。DOJは2020年の出来事を暴力と反乱の主張を補強するために利用しようとしましたが、裁判官は一時的差し止め命令の性質上、過去の出来事に多くの時間を費やすことを望みませんでした。しかし、州と市の弁護士は、連邦政府の介入が状況を「悪化」させ、トランプ氏に激怒した抗議者たちがオレゴン州とポートランドに矛先を向けることを懸念していました。
この訴訟を担当するカリン・イマーガット判事は、2019年にトランプ氏によって任命された人物です。以前の裁判官は、利益相反を理由に辞退していました。この裁判は、SNS上の情報が国家の安全保障と法執行に与える影響という、現代社会が直面する複雑な課題を浮き彫りにしています。
元記事: https://www.theverge.com/policy/792042/trump-oregon-national-guard-tro