はじめに: 顔認証と監視の影
米移民税関執行局(ICE)の活動を監視していたミネソタ州の住民が、連邦捜査官から顔認証技術で身元を特定された後、国際線の迅速な入国審査を可能にする「Global Entry」プログラムの資格を剥奪されたと主張しています。この事件は、政府機関による顔認証技術の広範な利用と、それに伴う市民のプライバシーおよび表現の自由への影響について、新たな懸念を投げかけています。
事件の経緯: 抗議活動家の監視と身元特定
ターゲット・コーポレーションのディレクターであり、ICEおよび国境警備隊(CBP)の車両を追跡するボランティア活動を行っているニコル・クレランド氏(56歳)は、1月10日、連邦捜査官と思われる白いダッジ・ラムを追跡しました。近隣のアパートへの強制捜査を懸念してのことでした。短時間の追跡後、捜査官の車両がクレランド氏の車を停車させ、一人の捜査官が車に近づいてきました。クレランド氏が車内に留まる中、捜査官は彼女の名前を告げ、「顔認証技術を使った」と明言し、さらにボディカメラで録画していることを伝えました。捜査官はクレランド氏が職務を妨害していると警告し、再び妨害行為があれば逮捕すると述べました。
「Global Entry」突然の取り消し
この遭遇からわずか3日後の1月13日、クレランド氏はGlobal EntryとTSA Precheckの資格が取り消されたとの通知を受け取りました。彼女は、自身が拘束されたり逮捕されたりしたわけではないため、これは法的な違反によるものではなく、捜査官を監視したことへの「脅迫と報復」であると強く主張しています。通知には取り消し理由が明確に示されていませんでしたが、考えられる理由の一つとして「税関、入国管理、農業規制、手続き、または法律の違反」が挙げられていました。クレランド氏は、2014年からGlobal Entryプログラムのメンバーであり、これまで問題は一度もありませんでした。
連邦機関による顔認証技術の広範な利用
米連邦政府機関は、トランプ政権下での移民取り締まりにおいて、顔認証技術を広範に利用していることが知られています。記事によると、Clearview AIや「Mobile Fortify」と呼ばれる顔認証アプリなどの技術が、市民権の確認や抗議活動参加者の特定に用いられています。ニューヨーク・タイムズ紙の報道によれば、クレランド氏は、今月ミネアポリス周辺でICE捜査官から顔認証技術で記録されていると告げられた少なくとも7人の米国市民の一人であり、これらの人々は記録への同意を与えていませんでした。ICEは他にも、携帯電話の位置を追跡するセルサイトシミュレーター(Stingrays)や、パランティア(Palantir)のソフトウェアなど、様々な監視技術を使用しています。
プライバシーと市民的自由への影響
クレランド氏は、今回の件で「怒りと威嚇を感じた」と述べていますが、抗議活動は続ける意向を示しています。彼女は、捜査官が自身のナンバープレートや個人情報を把握していること、将来的に自身や家族に対してさらなる行動が取られる可能性を懸念しています。この事件は、顔認証技術のような監視技術が、政府機関によって市民の行動を監視し、時にはその自由を制限するために利用される可能性について、社会的な議論を促すものとなるでしょう。
