OpenAI Dev Day 2025:AIの進化がもたらすセキュリティとプライバシーの新たな局面

Soraの進化と著作権管理、ディープフェイク対策

OpenAIの年次開発者イベント「Dev Day 2025」では、同社の主要プロダクトであるSoraとChatGPT、そして将来のAIハードウェアに関する重要な発表がありました。特に、AI生成ビデオプラットフォームSoraの進化は、著作権管理とディープフェイク対策というセキュリティ上の喫緊の課題に焦点を当てています。

Soraチームのリーダーであるビル・ピーブルズ氏は、これまでプラットフォームを悩ませてきた「メスを料理するスポンジ・ボブ」や「犯罪を犯すポケモン」のような無許可の著作権キャラクター利用を制限する方針を明らかにしました。今後は、公式なキャラクターコラボレーションが「ロードマップ上にある」とされ、著作権侵害への対応が強化される見込みです。

さらに、Soraはユーザーが自身のAIアバター(いわゆるディープフェイク)の登場をより詳細に制御できる機能を導入しました。これは、「AIスロップ」や「誤情報の津波」がインターネットを席巻する懸念が高まる中で、ユーザーのプライバシーと誤情報拡散防止に対するOpenAIの取り組みを示すものです。Soraが「ディープフェイク版TikTok」と称される中、この機能はユーザーが自身のデジタル肖像を管理する上で重要な一歩となります。

ChatGPTのプライバシーとユーザーコントロール

ChatGPTに関しては、ペアレンタルコントロール機能がウェブユーザー向けに展開され、モバイル版も「近日中」に提供される予定です。この機能により、ユーザーは性的なロールプレイや画像生成といった特定のコンテンツを制限または削除できるほか、過去の会話履歴を記憶させないことでパーソナライゼーションのレベルを調整することが可能になります。これは、未成年者の保護とユーザーのプライバシー設定の強化に貢献するものです。

また、Proユーザー向けに導入された新機能「ChatGPT Pulse」は、チャットボットがユーザーの会話履歴や電話のアクティビティ(カレンダー、メール、Google連絡先など)から学習し、パーソナライズされた日々の「パルス」情報を提供するものです。この機能は利便性を高める一方で、広範なデータ収集とパーソナライゼーションがもたらすプライバシーへの影響について、ユーザーがその設定を慎重に検討する必要があることを示唆しています。

AIハードウェアの動向とセキュリティへの示唆

OpenAIは、元Appleの著名デザイナーであるジョニー・アイブ氏との協業により、AIハードウェアの開発を進めています。これまでに、ディスプレイのないスマートスピーカー、AIメガネ、デジタルボイスレコーダー、ウェアラブルピンなどのデバイスが検討されていると報じられています。これらの製品は2026年後半から2027年前半のリリースを目指しており、OpenAIはアイブ氏のハードウェアスタートアップ「io」を約65億ドルで買収しました。

しかし、「Iyo」という聴覚デバイススタートアップからの商標訴訟により、OpenAIは一時的に「io」に関する言及をウェブサイトから削除する事態となりました。また、最初のデバイスは「インイヤーデバイス」や「ウェアラブル」ではないとされています。これらの新しいAIハードウェアは、ユーザーの日常生活に深く統合されることで、新たな攻撃対象領域とデータ収集ポイントを生み出す可能性があり、設計段階からの堅牢なセキュリティ対策が不可欠となります。

競争と市場支配、そして新たな脅威

AI業界の競争も激化しており、イーロン・マスク氏のxAIは、OpenAIとAppleがChatGPTをiPhoneに統合する契約を結んだことに対し、市場競争を阻害しているとして提訴しました。これは、AIエコシステムにおける市場支配と、それがセキュリティの多様性やイノベーションに与える影響について議論を提起するものです。

さらに、OpenAIがGoogleからChromeブラウザの買収に関心を示していることや、ChatGPTの画像生成機能に焦点を当てたX(旧Twitter)のようなソーシャルネットワークを開発しているという報道は、同社がプラットフォームの支配力を拡大しようとしていることを示唆しています。ソーシャルネットワークは、誤情報、ヘイトスピーチ、データ侵害の温床となりやすく、AI生成コンテンツが加わることで、新たなセキュリティとコンテンツモデレーションの課題が浮上することは避けられないでしょう。


元記事: https://www.theverge.com/news/640086/openai-chat-gpt-news-updates