スパイウェア企業NSOグループ、米投資家による買収を正式確認

NSOグループ、米投資家による買収を正式確認

イスラエルのスパイウェア開発企業NSOグループは、米国の投資グループが同社を買収したことをTechCrunchに正式に確認しました。NSOの広報担当者オデッド・ハーショウィッツ氏は金曜日、「米国の投資グループが数千万ドルを投資し、支配的株式を取得した」と述べました。この取引は、ハリウッドのプロデューサーであるロバート・シモンズ氏が率いるグループが、数千万ドル規模の契約で監視技術メーカーの買収に合意したとイスラエルのテックニュースサイトCalcalistが報じた直後の確認となりました。

ハーショウィッツ氏は投資額や投資家の詳細については言及を避けましたが、「この投資は、当社がイスラエルの規制または運営管理から外れることを意味するものではない」と強調しました。同社の本社と主要な事業はイスラエルに留まり、国防省を含む関連するイスラエル当局によって引き続き完全に監督・規制されるとのことです。

共同創設者ラヴィ氏の退任と過去の買収経緯

Calcalistの報道によると、今回のシモンズ氏との新たな取引の一環として、NSOの共同創設者で執行会長のオムリ・ラヴィ氏の同社への関与は終了する見込みです。ラヴィ氏はTechCrunchの取材に対し、コメントを控えています。

NSOグループの所有権はこれまでにも何度か移転しています。ニヴ・カルミ氏、シャレヴ・フリオ氏、オムリ・ラヴィ氏によって設立された同社は、2014年に米国のプライベートエクイティ企業フランシスコ・パートナーズに買収されました。その後、2019年にはラヴィ氏とフリオ氏が欧州のプライベートエクイティ企業ノヴァルピナの支援を受けて経営権を取り戻しました。2021年にはカリフォルニア州を拠点とするバークレー・リサーチ・グループがファンドの管理を引き継ぎ、2023年にはラヴィ氏がNSOの過半数所有者として再び経営権を掌握していました。

物議を醸すNSOグループの歴史と米国の制裁

NSOグループは創業当初から論争に巻き込まれてきました。トロント大学のシチズンラボやアムネスティ・インターナショナルなどのデジタル権利団体は長年にわたり、NSOの政府顧客がハンガリー、インド、メキシコ、モロッコ、ポーランド、サウジアラビア、アラブ首長国連邦などでジャーナリスト、反体制派、人権活動家を標的とし、ハッキングした数十件の事例を文書化してきました。

NSOは長らく、そのスパイウェアが米国の電話番号を標的にしないように設計されていると主張してきましたが、2021年には海外の約12人の米国政府関係者を標的にしていたことが発覚しました。これを受けて、米国商務省はNSOをエンティティリストに掲載し、米国企業との取引を禁止しました。それ以来、NSOはトランプ政権と関係のあるロビー活動会社を介して、2025年5月にも米政府のブロックリストからの解除を試みています。

専門家からの懸念の声

シチズンラボのシニア研究員で、NSOのスパイウェアの悪用を10年間調査してきたジョン・スコット=レイルトン氏は、今回の買収について懸念を表明しています。スコット=レイルトン氏は、「NSOは米国の利益に反し、米国政府関係者のハッキングを支援してきた長い歴史を持つ企業だ。そのような人物がNSOグループのような企業を適切に監督できると、一体どのような世界で考えられるのか」と、シモンズ氏を指して述べました。

さらに彼は、「私の真の懸念は、NSOが米国に参入し、米国の都市の警察に製品を販売しようと懸命に努力してきたことだ。この『独裁者技術』は、米国人や我々の憲法で保護された権利や自由の近くに存在すべきではない」と強く警告しています。


元記事: https://techcrunch.com/2025/10/10/spyware-maker-nso-group-confirms-acquisition-by-us-investors/