米中貿易戦争、新たな局面へ:レアアース規制と報復関税
2025年10月11日、ドナルド・トランプ前米大統領は、中国が発表したレアアース(希土類)輸出規制に対し、中国からの全輸入品に100%の追加関税を課すと発表しました。これは、既存の関税に「上乗せ」される形となり、米中間の貿易摩擦が新たな、より深刻な段階に入ったことを示唆しています。さらに、米国からの「あらゆる重要なソフトウェア」に対する輸出規制も課すとしており、ハイテク産業のサプライチェーンに大きな影響を与える可能性が指摘されています。
中国のレアアース規制:ハイテク産業への影響
今週初め、中国はレアアースの輸出管理を強化すると発表しました。これにより、外国企業は、たとえ少量であってもレアアースを含む製品を輸出する場合、ライセンスの申請が義務付けられます。レアアースは、半導体やソーラーパネルなど、現代のハイテク産業に不可欠な製品に使用される重要な鉱物であり、中国は世界の主要な生産国です。この規制は、中国が戦略的資源を武器化し、世界の技術サプライチェーンを支配しようとする動きと見られています。
トランプ氏の強硬姿勢:100%関税とソフトウェア輸出規制
トランプ氏は自身のソーシャルメディア「Truth Social」への投稿で、中国のレアアース規制を「国際貿易において前代未聞であり、他国との取引における道徳的な恥辱だ」と強く非難しました。彼は、この新たな100%関税が11月1日に発効すると述べています。CNBCの報道によると、中国製品に対する米国の基本関税率はすでに40%に達しており、今回の追加関税は経済的な打撃をさらに増幅させることになります。また、米国からの「あらゆる重要なソフトウェア」に対する輸出規制は、中国の技術開発能力を直接的に阻害することを狙ったものと解釈できます。
市場の動揺と経済への波紋
トランプ氏の発表を受け、市場は即座に反応しました。金曜日の市場終値では、ダウ・ジョーンズ工業株平均が1.9%、S&P 500が2.71%、ナスダックが3.56%それぞれ下落しました。特に、NvidiaやTeslaといった主要なテクノロジー企業は、約5%の大幅な下落を記録しました。さらに、暗号通貨市場でも大きな動揺が見られ、FTX破綻時の10倍に相当する規模の清算が発生したと報じられており、世界経済の不安定化が懸念されています。
今後の展望:対話の可能性と不確実性
トランプ氏は発表後、記者団に対し、これらの関税は「撤回される可能性もある」と述べ、習近平国家主席との会談を必ずしも中止するわけではないと付け加えました。この発言は、強硬な姿勢を示しつつも、対話の余地を残していることを示唆しています。しかし、今回の措置が発効すれば、米中間の経済的・技術的デカップリングがさらに加速し、世界の地政学的リスクが高まることは避けられないでしょう。国際社会は、このエスカレートする貿易戦争の行方を注視しています。