買収の概要
金融大手ゴールドマン・サックスは、サンフランシスコを拠点とする投資会社Industry Venturesを最大9億6500万ドルで買収することに合意しました。この買収は、現金と株式で6億6500万ドルが支払われ、さらに2030年までの同社の業績に応じて最大3億ドルが追加される可能性があります。取引は来年第1四半期に完了する見込みで、Industry Venturesの全従業員45名がゴールドマンに加わる予定です。
市場背景と買収の動機
今回の買収は、伝統的なベンチャーキャピタル(VC)のイグジット(IPOなど)が低迷する中、セカンダリー市場とバイアウトの重要性が高まっていることを浮き彫りにしています。Industry Venturesは25年の歴史を持ち、70億ドルの運用資産を誇る企業です。
Industry Venturesの創設者兼CEOであるハンス・スウィルデンス氏は、今年のTechCrunchのポッドキャストで、現在ではテック系バイアウトファンドがベンチャーエコシステム全体の流動性の25%を占めていると指摘しました。同氏は、「IPOや戦略的M&Aによるイグジットを待つだけではもはや通用しない。VCは代替の流動性ソリューションに取り組む必要がある」と述べ、市場の変化への適応の必要性を強調しています。
ゴールドマン・サックスは、5400億ドル規模の代替投資プラットフォームを強化するため、今回の買収に踏み切りました。これは同行が主要な成長エンジンと位置付けている分野です。
買収の戦略的意義
ゴールドマン・サックスのCEOであるデビッド・ソロモン氏は、「Industry Venturesの信頼関係とベンチャーキャピタルに関する専門知識は、当社の既存の投資フランチャイズを補完し、顧客が世界で最も急速に成長している企業やセクターにアクセスする機会を拡大する」とコメントしています。また、両社の統合により、起業家、非公開テクノロジー企業、リミテッドパートナー、ベンチャーファンドマネージャーの複雑化するニーズに対応できると述べています。
Industry Venturesは、これまでに1,000件以上の投資を行い、700以上のベンチャー企業に出資しており、18%という高い内部収益率(IRR)を誇っています。
ベンチャーキャピタル市場の新たな潮流
長期にわたるIPOの低迷を受け、ベンチャーファンドは非伝統的なイグジット戦略へとシフトしています。セカンダリー取引、コンティニュエーションファンド、バイアウトといった代替流動性ソリューションが注目されており、大手ベンチャーファンドもこれらの戦略に特化した人材を雇用し、流動性確保のための構造を検討している状況です。今回のゴールドマン・サックスによる買収は、この市場の大きな変化と、金融機関が新たな成長機会を追求する動きを象徴するものと言えるでしょう。