X、リンク表示方法を変更しアプリ内滞在を強化
X(旧Twitter)は、iOS版アプリにおけるリンクの処理方法を変更し、ユーザーのアプリ内滞在時間を延ばすための新たな試みを開始しました。これまでは、リンクをクリックすると外部のウェブページが画面全体を覆い、元の投稿へのエンゲージメントが低下する傾向にありました。しかし、今回の変更により、リンク先のページを開いた際も、「いいね」「返信」「リポスト」といったボタンが常に表示されるようになります。
具体的には、外部サイトのコンテンツが画面下部に折りたたまれて表示される形式となり、ユーザーはアプリを離れることなく、リンク先のコンテンツを閲覧しつつ、元の投稿へのリアクションを続けることが可能になります。この変更は、リンク付き投稿のエンゲージメントが低いという長年の課題に対処し、Xを「あらゆる機能を持つアプリ(everything app)」へと進化させるというイーロン・マスク氏のビジョンを推進するものです。
AI「Grok」がレコメンデーションの主役に:情報拡散の新たな時代へ
さらにXは、レコメンデーションシステムにも大きな変更を加えることを発表しました。イーロン・マスク氏によると、今後4〜6週間以内に「あらゆるヒューリスティック(経験則)の削除」が行われ、いいねや返信といった従来のエンゲージメント指標がコンテンツのリーチに与える影響が小さくなるとのことです。
代わりに、XのAIである「Grokが文字通りすべての投稿と動画(1日1億以上)を読み込み、ユーザーが最も興味を持つ可能性のあるコンテンツとマッチングさせる」とされています。これは、ルールベースのアルゴリズムから、AIがコンテンツの実際の意味を理解して推奨するシステムへの移行を意味します。この変更により、フォロワー数の少ないアカウントの投稿でも、リンク付きコンテンツを含め、より多くのユーザーにリーチする可能性が高まると期待されています。
セキュリティとプラットフォームの健全性への影響
これらの変更は、ユーザー体験の向上とエンゲージメントの促進を目指すものですが、セキュリティとプラットフォームの健全性に関していくつかの重要な懸念も生じさせます。
- 誤情報・偽情報の拡散リスク:AIがコンテンツを分析する際、誤情報や偽情報を含むリンク付き投稿をどのように識別し、対処するのかが課題となります。従来のヒューリスティックが削除されることで、悪意のあるコンテンツがより広範囲に拡散されるリスクが高まる可能性があります。
- ユーザープライバシーへの懸念:Grokが「すべての投稿と動画」を読み込むという方針は、ユーザーデータの広範な収集と分析を意味し、プライバシー保護の観点から詳細な説明と透明性が求められます。
- プラットフォーム操作の新たな手法:AIベースのレコメンデーションシステムへの移行は、プラットフォームを操作しようとする者が、AIのアルゴリズムを欺く新たな手法を開発するインセンティブを生む可能性があります。
- コンテンツの質の変化:エンゲージメントを最大化し、アプリ内滞在を促すための変更が、クリックベイトや扇情的なコンテンツの推奨を助長し、プラットフォーム全体のコンテンツの質に悪影響を与える可能性も考慮する必要があります。
Xがこれらの課題にどのように対応していくか、今後の動向が注目されます。