はじめに:M5チップ搭載Vision Proの登場
AppleのVision ProにM5チップを搭載した最新モデルのレビューが、発売に先駆けて公開されました。今回のアップデートでは、M5チップによる性能向上、より快適なデュアルニットバンドの同梱、そして最大120Hzのリフレッシュレート対応が主な焦点となっています。これにより、Mac Virtual Display機能使用時のモーションブラーが軽減され、よりスムーズな体験が提供されると期待されています。
M5チップによる性能向上
9to5MacのChance Miller氏は、M5チップ搭載Vision Proを5日間使用した結果、「M2 Vision Proでラグやスタッターが発生する状況でも、M5 Vision Proは一貫したパフォーマンスを維持する」と報告しています。ファンは作動するものの、全体的なパフォーマンスは持続可能で安定しているとのことです。
Six ColorsのJason Snell氏も同様に、M5プロセッサの速度は特に新しいSpatial Personaの構築時に顕著であると述べています。M2モデルでも高速だと感じていたものの、M5ではレンダリングの恩恵が大きいと感じているようです。Appleによると、M5チップを搭載したVision Proは、フォビエートレンダリングにおいてM2モデルと比較して10%多くのピクセルをレンダリングできるとされており、これが視覚体験の向上に寄与しています。
視覚体験の進化
10%増のピクセルレンダリングと120Hzのサポートにより、visionOSでのコンテンツ表示はより鮮明で滑らかになったとレビュー担当者は評価しています。しかし、CNETのScott Stein氏は、これらの変更は劇的なものではなく、体験の主要部分は変わっていないと指摘しています。視野角は他のVRヘッドセットに比べて依然として狭く、ハンドトラッキングとアイトラッキングは優れているものの、改善は見られないとのことです。
デュアルニットバンドがもたらす快適性
初代Vision Proのソロニットバンドでは、長時間使用時の不快感が一般的な不満点でした。この問題に対処するため、Appleは新しいデュアルニットバンドを導入しました。このバンドは、後頭部を横切る下部ストラップと頭頂部を横切る上部ストラップで構成されています。さらに重要なのは、下部ストラップにタングステンインサートが埋め込まれている点で、これがカウンターウェイトとして機能し、快適性とバランスを向上させています。
- TechRadarのLance Ulanoff氏は、デュアルニットバンドを「格段に快適」と評価し、2時間装着しても顔に圧迫感を感じなくなったと述べています。
- Tom’s GuideのMark Spoonauer氏も、長時間のセッションでより快適になり、30分後も目の圧迫感や首の負担が軽減されたと同意しています。
- Stein氏は、重量バランスが改善され、頬への負担が減少したとしながらも、新しいストラップのカウンターウェイトにより、全体で5オンス重くなり、依然として重いデバイスであることに変わりはないと指摘しています。
デュアルニットバンドは単体でも99ドルで販売され、新旧両方のVision Proモデルと互換性があります。
バッテリー駆動時間の改善
バッテリー駆動時間に関する詳細なテストはまだ少ないものの、Spoonauer氏は1時間半使用後でバッテリー残量55%と「かなり良好」であると報告しています。Appleは、アップデートされたVision Proが最大2.5時間のバッテリー駆動時間、ビデオ再生で最大3時間を提供すると発表しており、これは旧モデルと比較して各30分の延長となります。
総評:着実な進化と今後の展望
多くのレビューは、今回のVision Proのアップデートが「いくつかの素晴らしいQOL(Quality of Life)改善」をもたらしたものの、「ゲームチェンジャーとなるアップグレードではない」と結論付けています。依然としてニッチで高価な製品であり、既存モデルのユーザーがアップグレードする大きな理由はないというのが共通の見解です。
Appleが拡張現実(AR)メガネに注力していると報じられていることから、このモデルがしばらくの間、最後のVision Proモデルになる可能性も示唆されています。