はじめに
YouTubeは、AIによって生成されたコンテンツにおけるクリエイターの肖像権侵害を検出する技術を、YouTubeパートナープログラムの対象クリエイター向けに正式に展開しました。これはパイロット段階を経ての導入となり、YouTubeの広報担当者によると、対象となるクリエイターには既にメールで通知が送られています。
技術の目的と背景
この新技術は、クリエイターの顔や声といった肖像がAIによって生成されたコンテンツを特定し、管理することを目的としています。その主な狙いは、クリエイターの肖像が、同意なしに製品やサービスの宣伝に利用されたり、誤情報の拡散に悪用されたりするのを防ぐことです。近年、AIによる肖像権侵害の事例は増加しており、例えば、企業ElecrowがYouTuberのJeff Geerling氏の声をAIクローンで利用し、製品を宣伝したケースなどが挙げられます。
この技術は今年初めからパイロット運用されており、YouTubeは昨年、Creative Artists Agency (CAA) と提携し、有名人、アスリート、クリエイターがプラットフォーム上でAI生成された肖像権侵害コンテンツを特定する支援を行ってきました。さらに、YouTubeは今年4月、AI生成されたレプリカが個人の画像や音声を模倣して他人を欺き、有害なコンテンツを生成する問題に対処することを目的とした「NO FAKES Act」法案への支持を表明しています。
クリエイターによる利用方法
YouTubeは、クリエイター向けチャンネル「Creator Insider」で、この技術の利用方法を説明しています。利用開始までの手順は以下の通りです。
- 「肖像」タブにアクセスします。
- データ処理に同意します。
- スマートフォンで画面に表示されるQRコードをスキャンし、本人確認用のウェブページに移動します。
- 本人確認には、写真付き身分証明書と短い自撮り動画が必要です。
YouTubeからツールの利用が許可されると、クリエイターは検出されたすべての動画を閲覧できるようになります。その後、YouTubeのプライバシーガイドラインに従って削除リクエストを提出するか、著作権侵害の申し立てを行うことができます。動画をアーカイブするオプションも提供されています。
オプトアウトの選択肢
クリエイターは、いつでもこの技術の利用を停止することができます。オプトアウト後、YouTubeは24時間以内に動画のスキャンを停止します。
今後の展望
この技術の導入は、AI技術の進化に伴う新たな課題に対し、プラットフォームがクリエイター保護に積極的に取り組む姿勢を示すものです。肖像権の保護と誤情報の拡散防止は、デジタルコンテンツが氾濫する現代において、ますますその重要性を増しています。
元記事: https://techcrunch.com/2025/10/21/youtubes-likeness-detection-technology-has-officially-launched/