LexisNexis CEO、AI法時代は既に到来と語る:法曹界におけるAIの課題と解決策

LexisNexisとAIの時代

法曹界の基盤を支えるLexisNexisのCEO、ショーン・フィッツパトリック氏は、AI法時代が既に到来していると語ります。かつては判例検索の主要ツールであったLexisNexisは、現在では「AI駆動型の情報、分析、ドラフト作成ソリューションプロバイダー」へと変貌を遂げました。同社のAIツール「Protégé」は、単なる調査を超え、弁護士が法廷に提出する実際の法律文書のドラフト作成を支援することを目指しています。

AIがもたらす法的課題

しかし、AIの導入は法曹界に混乱と新たな課題をもたらしています。特に問題視されているのは、AIが「幻覚」(存在しない判例を引用すること)を引き起こすリスクです。実際に、AIツールの不適切な使用により弁護士が懲戒処分を受けたり、裁判所の判決が撤回されたりする事例が報告されています。フィッツパトリック氏は、弁護士がAIのずさんな使用によって弁護士資格を失うのは時間の問題だと警鐘を鳴らしています。

汎用AIツールが法曹界で直面する主な問題点は以下の通りです:

  • 非決定論的性質:AIの予測不可能な挙動は、厳格な法的判断には不向きです。
  • 権威あるコンテンツの欠如:「インターネットで見つけた」情報では法廷で通用しません。
  • 情報の鮮度:汎用AIモデルは常に最新の法律情報に更新されているわけではありません。
  • プライバシーとセキュリティ:弁護士と依頼人の間の機密性を保護するレベルのセキュリティが不足しています。
  • 透明性の不足:AIがどのように結論に至ったかの論理が不明瞭です。

LexisNexis Protégéの解決策

LexisNexisは、これらの課題に対し、Protégéの「正確性」を最大の約束として掲げています。同社は、汎用AIツールとは一線を画す「法廷グレードのソリューション」を提供すると主張しており、その特徴は以下の通りです:

  • 根拠データ:1600億件の文書と記録からなる厳選されたコレクションに基づいています。
  • シテイターエージェント:判例が捏造されたものではなく、現在も有効な法律であることを確認する機能です。
  • プライバシーとセキュリティ:弁護士と依頼人の特権を保護するための高いレベルのプライバシーとセキュリティを提供します。
  • 透明性:AIの「ブラックボックス」を開示し、システムが適用した論理を弁護士が確認・変更できるようにします。

これにより、弁護士はAIの生成した内容を盲目的に信頼するのではなく、その根拠を検証し、必要に応じて調整することが可能になります。

AIと法律専門職の未来

AIが法律専門職に与える影響については、哲学的な議論も巻き起こっています。特に、若手弁護士が経験を積むための「徒弟制度」がAIによってどのように変化するかが懸念されています。AIが調査やドラフト作成といった下位の作業を代行することで、若手が「弁護士としての思考」を学ぶ機会が失われるのではないかという声もあります。

フィッツパトリック氏は、AIは弁護士を「代替するのではなく、補強する」ものだと強調しています。彼は、法曹界はこれまでも多くの課題を乗り越えてきた歴史があり、このAIの波も最終的には乗り越え、新たな形で適応していくだろうと楽観的な見方を示しています。


元記事: https://www.theverge.com/podcast/807136/lexisnexis-ceo-sean-fitzpatick-ai-lawyer-legal-chatgpt-interview