はじめに:国家安全保障を強化する新たな提携
AMDは米国エネルギー省と、10億ドル規模の画期的な提携を発表しました。この提携により、オークリッジ国立研究所(ORNL)に2つの新型スーパーコンピューター「Lux」と「Discovery」が導入されます。OracleとHewlett Packard Enterprise(HPE)も協力パートナーとして名を連ね、米国の科学技術力と国家安全保障の強化を目指します。
AIファクトリー「Lux」:科学と安全保障の加速
2026年初頭に稼働予定の「Lux」は、「科学、エネルギー、国家安全保障のための国内初の専用AIファクトリー」と位置付けられています。このスーパーコンピューターは、AI基盤モデルの訓練、微調整、展開に特化しており、データ集約型およびモデル中心のワークロードに最適化されています。Luxは、AI主導の科学的発見と工学イノベーションを加速させ、国家の重要なインフラや防衛技術の発展に不可欠なAI能力を供給することが期待されます。
次世代スーパーコンピューター「Discovery」:広範な科学研究を支援
2029年に稼働を開始する「Discovery」は、「Bandwidth Everywhere」設計を採用し、既存のFrontierスーパーコンピューターの性能とエネルギー効率を大幅に向上させます。この強力な計算能力は、エネルギー、生物学、先端材料、国家安全保障、製造革新といった幅広い分野の科学研究を支援します。具体的には、次世代原子炉、バッテリー、触媒、半導体、そして国家の戦略的自立に不可欠な重要材料の設計に貢献するとされています。
国家安全保障への多角的な貢献
今回の提携は、単なる計算能力の増強に留まらず、米国の国家安全保障戦略において極めて重要な意味を持ちます。Luxが開発する高度なAIモデルは、サイバーセキュリティ、情報分析、防衛システムにおける新たな脅威への対応能力を飛躍的に向上させる可能性があります。また、Discoveryが推進する先端材料やエネルギー技術の研究は、サプライチェーンの強靭化や、将来の紛争における技術的優位性の確保に直結します。AMDが過去にも米国政府のスーパーコンピューター開発に貢献してきた実績は、この提携が国家レベルの戦略的投資であることを裏付けています。
