ヴィンス・ギリガン、SFジャンルへの回帰
『ブレイキング・バッド』や『ベター・コール・ソウル』の生みの親であるヴィンス・ギリガンが、再びSFの世界に戻ってきました。かつて『X-ファイル』でキャリアをスタートさせた彼が、Apple TV+の新作シリーズ『Pluribus』で、長年のSFへの思いを形にしています。ギリガンはThe Vergeに対し、SFへの回帰は「意識的な決断ではなかった」と語っています。特定のアイデアを追求した結果、SF以外ではその出来事を説明できないと気づいたとのことです。
『Pluribus』のユニークなコンセプト
『Pluribus』は、レア・シーホーン(『ベター・コール・ソウル』でギリガンと共演)演じるキャロルが、非常に奇妙な世界に放り込まれる物語です。キャロルと数人の例外を除き、地球上の誰もが「終わりのない幸福」に感染しているように見えます。彼らは常に笑顔で、キャロルを幸せにし、最終的には彼女をその陽気な狂気の中に引き込もうと、あらゆる手段を講じます。
このアイデアは、ギリガンが10年近く温めてきたものです。『ベター・コール・ソウル』の制作中に昼休みの散歩中に「誰もが自分に親切な世界に住む男」という空想から生まれたと彼は説明しています。
レア・シーホーンへの信頼と「不本意なヒーロー」
ギリガンは、シーホーンの演技に深い感銘を受け、『ベター・コール・ソウル』の終盤に差し掛かる頃には、『Pluribus』のコンセプトを彼女が主役となるように再構築することを決意しました。彼は「レアのために役を調整した」と述べ、彼女が「コールシートのナンバーワンになる時が来た」と感じたと言います。
キャロルというキャラクターは、物語が始まる前から不満を抱えており、絶え間ない陽気さに直面することでその感情はさらに悪化します。ギリガンは、シーホーンがドラマとコメディの両方の経験を持つことで、この「皮肉屋で人間嫌い」なキャラクターを「不本意なヒーロー」として見事に演じきったと評価しています。
視聴者の知性を信じるクリエイターの哲学
『Pluribus』のプロモーションは、謎に包まれたティーザーや、物語の核心をほのめかす程度の予告編で展開されてきました。ギリガンは、この「秘密主義」が作品の展開において重要な要素であると語ります。彼は「10年、15年前なら、すべてを説明したいという圧倒的な欲求を感じていただろう」と振り返り、今では「視聴者の知性を信じるようになった」と述べています。彼の作品が「本当に賢い視聴者を引きつける」と確信しているのです。
アルバカーキを舞台にした理由
『Pluribus』の舞台は、『ブレイキング・バッド』や『ベター・コール・ソウル』と同じくニューメキシコ州アルバカーキです。ギリガンは、この選択の主な理由は、20年近く共に仕事をしてきたクルーとの継続的な協力を可能にするためだと説明しています。しかし、彼はインターネット上の探偵たちが彼の全シリーズ間のつながりを探すことに対して、「息を止めて待たないでほしい」と述べ、『Pluribus』が独自のユニバースであることを強調しています。
『Pluribus』は11月7日よりApple TV+で配信開始されます。
