はじめに
Appleは、初代AirPods Proの異音(クラックル音や静電気のようなノイズ)問題に関する集団訴訟において、一部の訴えの棄却を勝ち取りました。この訴訟は、Appleが製品の欠陥を隠蔽し、虚偽の広告を行ったと主張するユーザーによって提起されたものです。今回の判決はAppleにとって部分的な勝利となりましたが、訴訟はまだ完全に終結していません。
訴訟の背景
初代AirPods Proの発売後まもなく、多くのユーザーからクラックル音、ガタガタ音、ポップ音、静電気のようなノイズといった異音の報告が相次ぎました。これに対しAppleは、2020年5月にソフトウェアアップデートを、同年10月には修理プログラムを提供して対応しました。しかし、訴訟を起こしたユーザーらは、Appleがこの欠陥について正直に開示していれば、製品を購入しなかったか、より少ない金額でしか購入しなかっただろうと主張しています。
裁判所の判断:棄却された訴え
Appleは2025年3月に訴訟の棄却を求める申し立てを行い、その結果、以下の訴えが棄却されました。
- 一部の州における詐欺および消費者法関連の訴え
- 明示的保証および黙示的保証に関する訴え
- 全国規模の訴え(各州の代表原告が提示されなかったため)
- 一部の原告固有の訴え
- カリフォルニア州における不当利得の訴え
- 初代AirPods Proがすでに販売されていないため、差し止め命令の訴え
これらの棄却された訴えの多くは、21日以内に修正して再提出することが可能であり、今後の展開によっては再び審理される可能性があります。
残された「不作為による詐欺」の訴え
今回の判決で、「不作為による詐欺(fraud by omission)」の訴えは棄却されずに残りました。これは、Appleが2020年の修理プログラムで公に欠陥を認めた後も、その欠陥の開示を怠ったと主張するものです。原告側は、Appleが欠陥を認識しながら隠蔽し、有効な保証修理を拒否したことを証明する必要があります。
Appleは、保証期間終了後に安全上の問題のみを開示する義務があるとし、AirPods Proの音響欠陥は安全上の問題ではないと主張しましたが、裁判所はこの主張を時期尚早として退けました。この「不作為による詐欺」の訴えが、今後の訴訟の行方を左右する重要なポイントとなるでしょう。
今後の展望
今回の部分的な棄却はAppleにとって一歩前進ですが、訴訟はまだ続いています。原告側が修正された訴えを提出し、Appleが欠陥を認識しながら隠蔽したという証拠を提示できるかどうかが焦点となります。この訴訟は、製品の欠陥開示における企業の責任と、消費者の信頼に与える影響について、重要な先例となる可能性があります。
元記事: https://www.macrumors.com/2025/10/29/airpods-pro-crackling-lawsuit-partial-dismissal/
