AIリスクによる損失が多発、ガバナンス強化が急務
企業におけるAI導入が進む中、AI関連のリスクが深刻な影響を及ぼしています。EYの最新調査によると、回答企業の5社中3社以上がAIリスクに関連する100万ドル以上の損失を経験しており、ほぼ全ての企業(99%)が何らかの金銭的影響を報告しています。EYは、調査対象企業全体で合計43億ドルの損失が発生したと推定しています。
しかし、この状況に対する有効な緩衝材として、ガバナンスと責任あるAIプラクティスが注目されています。明確な責任あるAI原則を定めている企業は、そうでない企業と比較してリスク発生率が30%低いことが判明しました。多くの企業がガバナンスを強化しており、従業員との標準共有、順守状況を測る指標の導入、安全対策の確立など、平均7つのリスク軽減策を講じています。
AI導入の課題とガバナンスの重要性
企業はAIの導入に伴い、新たなリスク管理と投資収益率(ROI)の追求という課題に直面しています。EYのグローバル最高イノベーション責任者であるジョー・デパ氏は、「多くの組織でAIソリューションの導入が急速に進んでいるが、今やAIでどのような価値を達成しているのかが問われている」と述べています。
企業は生産性向上、コスト削減、収益成長をAIイニシアチブの目標としていますが、多額の投資にもかかわらず、期待されるROIが得られずに失望しているケースも少なくありません。アナリストや業界専門家は、ガバナンスの強化とイノベーションの関連性を強調しており、AIのガードレールがROI達成や従業員満足度といった最も困難な分野で有効であることがEYの調査で示されています。
EYが実践するAIガバナンスモデル
生成AIの急速な普及に対し、そのガバナンス体制の整備は遅れがちでした。デパ氏は、「異なるガバナンスプロセスが必要であり、EY自身もガバナンスの見直しと最適化に取り組んできた」と語っています。EYでは、以下の3つのガバナンスプロトコルを採用しています。
- ファストトラックパス:明確なビジネスケース、ROI、セキュリティ、倫理、コンプライアンスプロトコルへの準拠があるアイデア向け。四半期ごとにレビューされ、期待通りに進んでいるかを確認します。
- リスクの高いユースケース:より厳格な監視と追加の安全対策を必要とし、別のプロトコルで管理されます。
CIOはリスク軽減を最優先事項としており、OneTrustの調査によると、ほぼ全てのCIOがガバナンス予算の増額を計画しています。デパ氏は、イノベーションを加速させるためには、チームに明確な指針を与え、技術専門家がその中で活動できるようなガードレールを設けることが重要だと提言しています。「従来のAIガバナンスモデルだけでは不十分であり、リスクプロファイルを作成し、適切なガードレールを設置することで、組織は責任あるイノベーションを推進できる」と締めくくりました。
元記事: https://www.cybersecuritydive.com/news/AI-risks-responsible-safeguards-guardrails-EY-data/804102/
