Salesforceがエンタープライズ向け「Agentforce Vibes」を発表:AIによる「Vibeコーディング」でセキュリティを強化

Salesforceが「Vibeコーディング」市場に参入

エンタープライズ大手Salesforceは、AIを活用した新しい開発者ツール「Agentforce Vibes」を発表し、「Vibeコーディング」の波に乗ろうとしています。Vibeコーディングとは、開発者が自然言語で要件を記述するだけで、AIエージェントがコードを生成する手法を指します。

この新製品は、開発者がSalesforceアプリケーションやエージェントを自律的に開発できるよう支援し、技術的な実装の大部分を自動化します。Agentforce Vibesは、アプリのアイデア段階から構築、そして監視に至るまで、エンタープライズレベルのセキュリティとガバナンス制御を組み込みながら、開発プロセス全体をサポートします。

エンタープライズ向けセキュリティとガバナンス

Agentforce Vibesの核となるのは、自律型AIコーディングエージェント「Vibe Codey」です。このエージェントは、企業の既存のSalesforceアカウントに接続されており、以下の点でセキュリティと整合性を確保します。

  • 既存のコードを再利用し、企業のコーディングガイドラインに従うことで、既存製品と一致するアプリケーションを作成します。
  • Salesforceの製品担当副社長であるダン・フェルナンデス氏は、「Vibeコーディングの可能性を享受しつつ、潜在的なセキュリティ問題を回避できる」と述べています。

さらに、この新機能はオープンソースのAIコーディングエージェント「Cline’s Visual Studio Code Extension」のフォークを基盤としています。SalesforceがClineを選択した主な理由の一つは、AIモデルが外部ツールやデータと安全に通信するためのシステムであるMCP(モデルコンテキストプロトコル)への強力なサポートがあったためです。これは、エンタープライズ環境におけるAIの安全な利用において極めて重要な要素となります。

開発効率の向上とコストメリット

フェルナンデス氏は、「モデルコンテキストプロトコルの設定、開発環境の構築、ツールのセットアップに時間を費やす必要がなく、すべてが事前に構築され、すぐに利用できる」と強調し、開発の障壁を大幅に下げると説明しています。Salesforceは2023年にAIを活用したコード構築ツールをリリースし、昨年には「Agentforce」の一般提供を開始しており、Agentforce VibesはこれらのAI開発者ツールスイートの最新の追加となります。

Vibeコーディング業界では、Lovableが18億ドルの評価額を獲得し、Anythingがわずか2週間で200万ドルの年間経常収益(ARR)を達成するなど、スタートアップが巨額の資金調達を行っています。しかし、これらのプラットフォームは大規模言語モデル(LLM)の使用量が多いため、コストが高く、利益率が低いという課題を抱えています。

Salesforceの場合、Agentforce Vibesは既存の広範な製品スイートに組み込まれているため、これらのコスト圧力は相対的に小さくなります。これにより、同社はより持続可能な形でVibeコーディングを提供できると見られます。

今後の展望と利用モデル

Agentforce Vibesでは、各Salesforce組織は1日あたり50リクエストまでOpenAIのGPT-5モデルを利用でき、それ以降のリクエストはSalesforceがホストするQwen 3.0モデルを通じて処理されます。現在、既存ユーザーには無料で提供されていますが、将来的には有料の利用プランが導入される予定です。