はじめに
英国政府が、再びAppleの暗号化技術に対する介入を試みていることが報じられました。今回は特に、英国市民のプライベートなiCloudデータへのバックドアアクセスを要求する新たな秘密命令が発行されたとされています。この動きは、ユーザーのプライバシーとセキュリティに対する広範な懸念を再燃させています。
過去の経緯と米国の介入
今年1月、英国はAppleに対し、世界中の暗号化されたユーザーファイルへのバックドア作成を求める広範な秘密命令を出していました。これに対しAppleは異議を申し立て、英国からエンドツーエンド暗号化されたiCloudストレージ機能である「Advanced Data Protection」を削除する措置を取りました。その後、米国の国家情報長官タルシ・ギャバード氏が、英国がこの命令を撤回したと発表。米国政府からの圧力により、この問題は一時的に収束したかに見えました。
新たな技術能力通知
しかし、Financial Timesの報道によると、英国の内務省は9月上旬に新たな技術能力通知(TCN)を発行しました。この新しい命令は、以前の広範な要求とは異なり、英国市民のiCloudバックアップへのアクセスを具体的に標的としているとされています。秘密のTCN命令の存在を明らかにすることは刑事犯罪ですが、この報道は、英国政府がAppleの暗号化に対する姿勢を再び強めていることを示唆しています。
セキュリティ専門家からの懸念
英国のこの動きは、セキュリティとプライバシーの専門家から強い懸念を引き起こしています。非営利のプライバシー監視団体であるPrivacy Internationalは、次のように警告しています。
- 「もしAppleが英国のためにエンドツーエンド暗号化を破棄すれば、それは全ての人にとって破棄されることになる。」
- 「結果として生じる脆弱性は、敵対的な国家、犯罪者、その他の悪意ある行為者によって世界中で悪用される可能性がある。」
このコメントは、特定の国のために暗号化を弱体化させることが、結果的に世界中のユーザーを危険に晒すことになるという、セキュリティコミュニティの共通認識を反映しています。
まとめ
英国政府は、今回の要求において米国からの圧力を受けていないと報じられており、その姿勢は強硬です。この問題は、国家安全保障と個人のプライバシー保護という、現代社会における重要なバランスを巡る議論を再び活発化させるでしょう。Appleがこの新たな要求にどのように対応するのか、そしてそれが世界中のユーザーのデータセキュリティにどのような影響を与えるのか、今後の動向が注目されます。
元記事: https://www.theverge.com/news/789985/apple-uk-revived-secret-order-encryption-backdoor