米エネルギー省が小型原子炉開発を加速
米国エネルギー省は、急増するAI(人工知能)技術の電力需要に応えるため、小型モジュール炉(SMR)の開発に対し総額8億ドルの助成金を交付することを発表しました。この動きは、気候変動対策とエネルギー安全保障の強化を目指す中で、原子力発電への関心が再び高まっている現状を浮き彫りにしています。
助成金交付の詳細:主要な受領企業と計画
今回の助成金は、テネシーバレー庁(TVA)とホルテック(Holtec)の2社にそれぞれ4億ドルが授与されました。
- テネシーバレー庁(TVA): GE Vernova Hitachi製の300メガワット級原子炉をテネシー州に1基建設する計画です。
- ホルテック(Holtec): 自社製の300メガワット級原子炉をミシガン州に2基建設する予定です。
これらの原子炉は、長年利用されてきた既存技術の改良版である「第3世代+」設計に基づいています。これにより、安全性と効率性の向上が期待されています。
テック業界の電力需要と小型モジュール炉の可能性
近年、データセンターやAIインフラの拡大に伴い、テック企業の電力消費量は飛躍的に増加しています。こうした背景から、安定かつクリーンな電力供給源として原子力発電、特にSMRへの注目が高まっています。
SMRは、従来の大型原子炉に比べてサイズが小さく、工場で部品を製造し現場で組み立てるモジュール式の建設が可能です。これにより、建設コストの削減、工期の短縮、そして大量生産による経済性の向上が見込まれています。しかし、世界原子力協会によると、現在稼働しているSMRはわずか2基にとどまっており、実用化と普及にはまだ課題が残されています。
今回の8億ドルの助成金は、SMR技術の実証と商業化を大きく後押しし、米国のエネルギー供給の多様化、ひいてはAI時代の電力安定供給に貢献することが期待されています。
