「エンドツーエンド暗号化」の謳い文句は誤解を招く?スマートトイレカメラ「Dekoda」のプライバシー問題

はじめに – スマートトイレカメラ「Dekoda」と「エンドツーエンド暗号化」の主張

米国の住宅設備メーカーKohlerは今年、スマートトイレカメラ「Dekoda」を発表しました。このデバイスは、トイレの便器内に設置され、排泄物の画像を撮影・分析することで、ユーザーの腸内健康に関するアドバイスを提供するというものです。プライバシーへの懸念を予測し、Kohlerはウェブサイト上で、Dekodaのセンサーは便器内のみを撮影し、全てのデータが「エンドツーエンド暗号化」によって保護されていると主張していました。

誤解を招く暗号化の表現 – セキュリティ研究者が指摘する問題点

しかし、この「エンドツーエンド暗号化」という表現が、実際の意味とは異なるとして、セキュリティ研究者のSimon Fondrie-Teitler氏がブログ記事で指摘しました。Kohlerのプライバシーポリシーを読み解くと、同社が言及しているのは、HTTPSウェブサイトなどで使用されるデータがインターネット上で転送される際に保護されるTLS暗号化であることが明らかになりました。

「エンドツーエンド暗号化」という言葉は、iMessage、Signal、WhatsAppといったメッセージングアプリで広く採用されており、送信者と受信者以外の誰もが内容を読み取れないセキュリティレベルを指します。この言葉をTLS暗号化の説明に用いることは不適切であり、ユーザーが「Kohler社はカメラで撮影した画像を見ることができない」と誤解する可能性があります。

Kohler社の説明と識者の懸念 – データ処理の実態とAI利用の可能性

TechCrunchからの質問に対しKohler社は回答していませんが、同社の「プライバシー担当者」はFondrie-Teitler氏に対し、ユーザーデータは「ユーザーの携帯電話、トイレアタッチメント、および当社のシステムに保存される際に暗号化される(encrypted at rest)」と説明しました。さらに、「データは転送中もエンドツーエンドで暗号化され、ユーザーのデバイスと当社のシステム間を移動するが、当社のサービス提供のためにシステム側で復号化され処理される」と述べたといいます。この説明は、データがKohler社のサーバー側で復号化されることを意味しており、一般的な「エンドツーエンド暗号化」の定義とは異なります。

また、セキュリティ研究者は、Kohler社がサーバー上で顧客のデータにアクセスできるのであれば、便器の画像をAIトレーニングに利用している可能性も指摘しました。これに対し、Kohler社の担当者は「アルゴリズムは非特定化された(de-identified)データのみでトレーニングされている」と回答しています。

プライバシーと消費者への影響 – 誤解が招く信頼性の問題

このスマートトイレカメラ「Dekoda」は、本体価格599ドルに加え、月額最低6.99ドルのサブスクリプションが必要となります。消費者が高額なデバイスとサービスに投資する中で、「エンドツーエンド暗号化」という言葉の誤用は、プライバシー保護に対する誤った安心感を与え、企業と消費者間の信頼を損なう恐れがあります。特に健康に関する機密性の高いデータを扱う製品において、正確な情報提供の重要性が改めて浮き彫りになりました。


元記事: https://techcrunch.com/2025/12/03/end-to-end-encrypted-smart-toilet-camera-is-not-actually-end-to-end-encrypted/