トランプ政権、自動車燃料効率基準を大幅緩和へ:EVシフトに逆行か、業界と消費者への影響は?

はじめに:トランプ政権の新たな動き

2025年12月3日、ドナルド・トランプ政権は、自動車の燃料効率基準を大幅に緩和する新たな計画を発表しました。これは、前バイデン政権が定めた厳格な環境規制から一転し、自動車業界に大きな影響を与える可能性があります。特に、電気自動車(EV)への移行が加速する中で、この政策変更は各方面で議論を呼んでいます。

緩和の内容と背景

国家幹線道路交通安全局(NHTSA)が発表した提案によると、2031年までに連邦燃料効率基準を平均34.5マイル/ガロン(約14.7km/L)に設定するとのことです。これは、バイデン政権が昨年最終決定した2031年までに平均50.4マイル/ガロン(約21.4km/L)という目標を大幅に下回る水準です。

トランプ大統領は、この措置により新車価格が1,000ドル引き下げられると主張していますが、クリーンエネルギー推進派は、結果として消費者の燃料費が増加すると警告しています。過去には、バイデン政権下の高基準により、2050年までに総額230億ドルの燃料費節約(車両1台あたり約600ドル)が見込まれていました。また、700億ガロンのガソリン使用量削減と、7億1,000万メートルトンの二酸化炭素排出量削減効果が期待されていましたが、今回の緩和によりこれらの目標は達成が困難になるでしょう。

今回の緩和は、EV購入インセンティブの撤廃、エネルギー効率政策の阻害、そして広範な汚染規制の骨抜きといった、トランプ政権のこれまでの環境政策と一貫しています。政権は、石油・ガス生産の拡大とアメリカの自動車メーカーの事業強化を目指しているとされます。

自動車業界への影響

燃料効率基準の緩和は、自動車メーカーにとって短期的な規制遵守の負担軽減となる可能性があります。バイデン政権下の厳しい基準では、自動車メーカーはフリート全体の燃料効率目標を達成するために、より多くのEVを販売する必要がありました。トランプ政権の運輸長官ショーン・ダフィーは、バイデン政権がCAFE(Corporate Average Fuel Economy)基準をEV販売の義務化に不正に使用していると非難していました。

実際に、ゼネラルモーターズ(GM)は2016年と2017年に1億2,820万ドルのCAFE罰金を、クライスラーを傘下に持つステランティスは2016年以降、5億9,000万ドル以上の罰金を支払っています。両社の幹部は、今回の発表時にトランプ大統領に同席し、フォードCEOのジム・ファーリー氏も「常識と手頃な価格の勝利」とコメントしています。

しかし、長期的に見れば、世界的なEVシフトの潮流から取り残されるリスクも指摘されており、メーカー各社の戦略に再考を促す可能性があります。

消費者と環境への影響

リーグ・オブ・コンサベーション・ボーターズのダリエン・デイビス氏は、「燃料効率基準の引き下げは、運転者のコストを増加させ、危険な大気汚染を削減し、交通量の多い道路近くに住む子供たち、高齢者、地域社会の健康被害を防止する上で達成された進歩を脅かすだろう」と述べています。燃料費の増加だけでなく、大気汚染の悪化や気候変動の加速による健康リスクや災害の増加も懸念されています。

今後の見通し

米国運輸省は、今回の提案について国民からの意見を募集するパブリックコメント期間を設けた後、来年中に最終的な基準を決定する予定です。この決定は、アメリカの自動車産業、エネルギー政策、そして環境問題に長期的な影響を与えることになります。


元記事: https://www.theverge.com/news/837575/trump-rollback-fuel-economy-standards