はじめに:AIチャットボット市場の動向
AIチャットボットの領域でChatGPTの成長が鈍化の兆しを見せている一方、GoogleのGeminiが急速にその差を縮めていることが、市場調査会社Sensor Towerの新たなデータで明らかになりました。現在もChatGPTが市場をリードしていますが、Geminiはダウンロード数、月間アクティブユーザー(MAU)の増加、アプリ利用時間の伸びにおいてChatGPTを凌駕し始めています。
市場シェアと利用者数:数字で見る現状
Sensor Towerの報告によると、ChatGPTは依然としてモバイルデバイスにおける全世界ダウンロード数の50%、全世界MAUの55%を占める最大手です。しかし、成長率を見ると状況は異なります。2025年11月時点での前年比MAU成長率は、ChatGPTが180%増、Geminiが170%増と、両者ともに著しい伸びを見せています。
しかし、直近の動向ではGeminiの勢いが際立っています。2025年8月から11月にかけてのMAU成長率は、ChatGPTが約6%増にとどまり約8億1000万人に達した一方、Geminiは同時期に約30%の急増を見せました。Sensor Towerは、ChatGPTが市場飽和に近づいている可能性を指摘しています。
Geminiの成長を牽引する要因
GeminiのMAU急増の背景には、2025年9月にリリースされた画像生成モデル「Nano Banana」の人気があります。また、特筆すべきは、米国のアンドロイドユーザーにおいて、単独のGeminiモバイルアプリを使用するよりも、Androidオペレーティングシステムを通じて直接Geminiを利用するユーザーが約2倍に達している点です。Androidが世界市場を席巻していることを踏まえると、このOS統合はGoogleに大きな競争優位性をもたらす可能性があります。
競合の激化:PerplexityとClaudeの台頭
AIチャットボット市場における競争はGeminiだけにとどまりません。PerplexityとClaudeといった競合も目覚ましい成長を遂げています。2025年のMAU成長率は、Perplexityが前年比370%増、Claudeが190%増と、それぞれ三桁成長を記録しています。
過去7ヶ月間(2025年5月~11月)で、Geminiは全世界MAUシェアを3%ポイント増加させました。対照的に、ChatGPTの全世界MAUシェアは過去4ヶ月間(2025年8月~11月)で3%ポイント減少しています。
アプリ内滞在時間の変化
アプリのエンゲージメントを示すアプリ内滞在時間も、Geminiが優位に立っています。Sensor Towerによると、2025年11月時点でGeminiユーザーは1日あたり11分アプリを利用しており、これは3月から120%の増加です。これも主に「Nano Banana」モデルの人気によるものと見られています。一方、ChatGPTユーザーの1日あたりの滞在時間は同時期に6%しか増加しておらず、11月は7月と比較して10%減少しています。
OpenAIの対応と今後の展望
この状況に対し、OpenAIのサム・アルトマンCEOは「コードレッド」の内部メモを発行し、社員に対し、パーソナライゼーション、信頼性、画像生成などの分野でAI製品の改善に注力するよう指示しました。
Sensor Towerのデータは、Googleが市場リーダーに追いつきつつあることを示唆していますが、Geminiの最近の好調の多くは「Nano Banana」の成功に起因しています。OpenAIも同様のインパクトを持つ新製品をリリースすれば、再び成長を加速させる可能性があり、AIチャットボット市場の競争は今後さらに激化すると予想されます。
元記事: https://techcrunch.com/2025/12/05/chatgpts-user-growth-has-slowed-report-finds/
