訴訟の概要
電気自動車メーカーのルシードモーターズは、元チーフエンジニアであるエリック・バッハ氏から、不当解雇、差別、報復を理由に提訴されました。カリフォルニア州北部地区連邦裁判所に提出された訴状によると、バッハ氏は同社の主要な人事担当幹部の一人が彼を「ドイツのナチ」と呼んだと主張しています。
この訴訟は、同社の職場文化に関する人事調査の結果、2025年初頭にバッハ氏がパワートレイン部門の監督責任を剥奪されたことに端を発しています。バッハ氏は、自身がドイツ系であるため標的にされたと訴えています。
バッハ氏の主張と報復行為
バッハ氏は、人事調査開始から数ヶ月後、そして一部の責任を失った後の2025年半ばに問題の発言について知ったと述べています。彼は同僚にこの出来事を報告するよう促し、ルシードモーターズも人事幹部がその発言をしたことを「確認した」とされています。その後、バッハ氏は別の人事担当副社長に対しても同様の人種差別的行動を理由に社内苦情を申し立てました。
しかし、バッハ氏は、ルシードモーターズが報復として2025年10月に辞任を強要しようとしたと主張しています。最終的に、ルシードは2025年11月5日にバッハ氏を解雇しました。同日のルシードのプレスリリースでは、バッハ氏が「退社した」とだけ記されていました。
ルシードモーターズの現状と幹部流出
この訴訟は、ルシードモーターズにとって困難な時期に起こりました。同社は、セカンドモデルであるグラビティSUVの生産を拡大する中で多額の現金を消費しており、2026年後半にデビュー予定のより手頃な価格帯の量産車も開発中です。
さらに、ルシードモーターズでは幹部の退社が相次いでいます。バッハ氏が解雇されたとされる日には、同社のエンジニアリング担当副社長も退社しました。元CEO兼CTOのピーター・ローリンソン氏も2月に突然辞任し、後任はまだ指名されていません。過去1年間に、投資家向け広報担当責任者、オペレーション担当上級副社長、欧州担当マネージングディレクター、ソフトウェア品質担当およびマーケティング担当副社長も退社しています。
バッハ氏のキャリアと調査の影響
訴状によると、バッハ氏は社内調査が始まるまでは昇進を期待されていた人物でした。彼はルシードモーターズに10年間勤務し、「全てのハードウェアエンジニアリング」「製品管理および企業計画」を統括していました。ルシードの会長であるトゥルキ・アルノワイザー氏は、バッハ氏の忠誠心と献身を称賛し、共に働き続けることを望んでいると伝えていたとされています。
取締役会のメンバーであるアンドリュー・リヴェリス氏も、バッハ氏が「最高技術責任者(CTO)になるのは間違いない」と示唆し、将来的には最高経営責任者(CEO)になる可能性もあると語っていたとバッハ氏は主張しています。しかし、2024年後半に開始された職場文化に関する調査(バッハ氏が「人事部の人種差別的信念に汚染された」と主張)により、彼は重要な責任を失い、取締役会会議からも除外されたとされています。
