Nvidia H200チップの対中輸出承認の可能性
米国商務省がNvidia製AIチップ「H200」の中国への輸出を承認する方向で検討していると、Semaforが情報筋の話として報じました。H200チップは、中国市場向けに開発されたH20チップと比較してはるかに高性能であり、この動きは米国のAIチップ輸出規制政策における大きな転換点となる可能性があります。ただし、輸出が許可されるのは、およそ18ヶ月前の世代のH200チップに限定される見込みです。
Nvidiaの反応と政策の背景
Nvidiaの広報担当者はTechCrunchに対し、「トランプ大統領が米国のチップ産業が競争し、高賃金の雇用と国内製造を支援する決定を評価する」と述べ、商務省によって審査された承認済み顧客へのH200の提供は「米国にとって素晴らしい、思慮深いバランス」だとコメントしています。この報道は、ハワード・ラトニック商務長官がH200チップの輸出に関する決定はドナルド・トランプ大統領の手に委ねられていると発言した一週間後に飛び込んできました。
議会の強い懸念と「SAFE Chips Act」
しかし、この輸出承認の動きは、国家安全保障に対する議会の懸念と真っ向から対立するものです。ネブラスカ州選出の共和党ピート・リケッツ上院議員とデラウェア州選出の民主党クリス・クーンズ上院議員は12月4日、中国への先進AIチップの輸出を2年以上にわたり阻止する法案「Secure and Feasible Exports Act(SAFE Chips Act)」を提出しました。この法案は、商務省に対し、先進AIチップの中国への輸出ライセンスを30ヶ月間拒否することを義務付ける内容です。法案の採決時期は現在のところ不明です。
トランプ政権の変遷する対中チップ政策
議会が中国への先進AIチップ輸出に一貫して懸念を抱いているにもかかわらず、トランプ政権の姿勢は揺れ動いています。トランプ政権は4月にNvidiaを含むチップ企業に対し、中国へのチップ輸出にライセンス要件を課しましたが、5月にはバイデン政権のAIチップ輸出規制緩和策を正式に撤回しました。夏には、米国政府はチップが中国との貿易交渉の交渉材料となる中、企業が全収益の15%を政府に納める限り、中国へのチップ輸出を開始できると示唆しました。しかし、その頃には中国における米国製チップの市場は既に緊張状態にあり、恒久的なダメージを受けていた可能性があります。
中国市場の現状
今年9月、中国のインターネット規制当局である国家互聯網信息弁公室(CAC)は、国内企業によるNvidia製チップの購入を禁止しました。これにより、中国企業は国内のAliBabaやHuaweiといった企業の低性能なチップに頼らざるを得ない状況となっています。今回の米国商務省の決定は、これらの複雑な背景の中で、米中間のAI技術覇権争いの新たな局面を示すものとなるでしょう。
