Spotify、米国・カナダでミュージックビデオ機能を本格展開
音楽ストリーミング大手Spotifyが、米国およびカナダを含む複数の市場でミュージックビデオ機能の提供を正式に開始しました。これは、昨年から海外市場でベータ版として提供されてきた機能が、主要市場に拡大された形です。特にプレミアムプランの有料会員のみが利用可能となっており、iOS、Android、デスクトップ、そしてTVアプリを通じて視聴できます。
シームレスな視聴体験と豊富なコンテンツ
ユーザーは、曲を聴いている最中に「Switch to video」オプションを選択することで、簡単にミュージックビデオに切り替えることができます。動画は、曲の現在の再生位置からスタートするため、中断なく音楽と映像を楽しめます。また、いつでも「Switch to audio」で音声のみの再生に戻すことも可能です。
- 対応プラットフォーム: iOS、Android、デスクトップ、TVアプリ
- 再生機能: 曲の途中からのビデオ再生、音声への切り替え、横向きでのフルスクリーン表示
- コンテンツ: 既存の短いループ動画(Canvas)に代わり、公式ミュージックビデオを配信
Spotifyは、年末までに「90s Video Hits」、「Hip-Hop Throwbacks」、「Latin Party Hits」、「Country Hits」、「Pop Music Video Hits」といったビデオ専用のプレイリストも提供する予定で、ユーザーのホーム画面にはパーソナライズされたビデオのおすすめも表示されます。
YouTube Musicとの競争激化と戦略的意義
今回のミュージックビデオ機能の導入は、YouTube Musicとの競争においてSpotifyの競争力を強化する重要な一手と見られています。YouTubeが自社の音楽ストリーミングサービスを提供し、ポッドキャスト分野にも力を入れている中、Spotifyもこれに対抗すべく、ビデオポッドキャストやコメント、Q&A、投票機能などのソーシャル機能の拡充を進めており、アプリ全体をより「ソーシャルネットワーク」のような体験へと進化させています。
音楽業界との提携とロイヤリティ
Spotifyは、この機能の実現に向けて、昨年11月にNMPA(全米音楽出版社協会)との間で重要な合意を締結しました。この提携により、NMPAの会員はオーディオ・ビジュアル(AV)権に関する直接ライセンス契約を結ぶためのポータルを利用できるようになり、ソングライターや独立系出版社への収益増加が期待されています。
さらに、2025年を通じてUniversal、Sony、Warner Music Groupといった主要な音楽レーベルともAV権を含む契約を締結しており、豊富なコンテンツの提供基盤を確立しています。具体的なミュージックビデオの数や契約の詳細は明らかにされていませんが、関係者によると、30秒以上のミュージックビデオのストリーミングには、オーディオストリームと同様にロイヤリティが発生するとのことです。
広がるグローバル展開
米国とカナダに加え、Spotifyは以下の国々でもミュージックビデオの提供を開始しています。
- アンティグア・バーブーダ
- バハマ
- バルバドス
- ドミニカ
- ガーナ
- グレナダ
- ガイアナ
- ハイチ
- ジャマイカ
- ウガンダ
- ベネズエラ
また、先行してベータ版が提供されていたブラジルとコロンビアでは、無料ユーザーでもミュージックビデオを視聴できるという違いがあります。
