NeurIPS 2025の主要トレンド:強化学習とGoogleの勢い
2025年12月10日、サンディエゴで開催されたAI業界最大のカンファレンス「NeurIPS(Neural Information Processing Systems)」は、今年も多岐にわたる議論と熱狂に包まれました。今回のイベントでは、特に強化学習(RL)が次なるフロンティアとして注目され、またGoogle DeepMindが研究と開発の両面で大きな勢いを見せていることが明らかになりました。そして、学術会議の枠を超えた豪華なパーティーシーンも大きな話題となりました。
NeurIPSは1987年に純粋な学術会議として始まりましたが、AIの進化ととともに巨大な産業イベントへと変貌。各研究機関が人材を募集し、投資家が次なるAIスタートアップを発掘する場となっています。
2026年に注目される「バズワード」
参加者へのアンケートから、2026年にさらに議論が活発になるであろうトピックが浮上しました。
- 強化学習(RL)、ワールドモデル、エージェントAI:Databricks共同創業者Andy Konwinski氏は、過大評価されている部分もあるとしつつ、これらが最も注目すべき分野だと指摘。LMArenaのAnastasios Angelopoulos氏は「RL、RL、RL、RLが世界を席巻している」とまで述べました。
- AIと科学、解釈可能性、RLの長期間ロールアウト:Hugging Face共同創業者Thomas Wolf氏が挙げた注目分野です。
- 継続学習(Continual Learning):OpenAIのRoon氏、Evgenii Nikishin氏、そしてステルスRLスタートアップのRonak Malde氏らが、継続学習が重要な研究フロンティアになると強調しました。
- 表形式基盤モデル(Tabular Foundation Models)と物理AI:Metaの研究者Maya Bechler-Speicher氏や匿名のAI研究者は、これらが大きな牽引力を得ており、2026年以降も勢いを増すと予測しています。
- 主権型オープンモデル、オンプレミスでのファインチューニングとRL:Google DeepMindのPaige Bailey氏は、特にこれらの分野におけるワールドモデルやロボティクスが大きなトレンドになると見ています。
- 真に創造的なAIシステム:香港中文大学の学生大使Richard Suwandi氏は、既知の範囲内で最適化するだけでなく、真に新しいアイデアを生み出すAIシステムの構築が、2026年の主要な研究フロンティアになると語っています。
勢いを見せる研究機関と課題を抱えるスタートアップ
AI研究の最前線で勢いを増しているラボや、逆に苦戦しているラボについても意見が交わされました。
- Google DeepMindの躍進:Hugging FaceのThomas Wolf氏は、「Google DeepMindは好調だ」とコメント。WaymoのBrian Wilt氏も、Alphabet/Googleが今年最も多くの論文を発表したことに誇りを示しました。Richard Suwandi氏も、Google DeepMindが「Nested Learning」や「Titans/MIRAS」といった、より継続的で長期記憶に焦点を当てた新しい研究アジェンダを推進していると述べ、その勢いを評価しています。
- 台頭する新興勢力:Alibaba/Qwen、Moonshot/Kimi、Arcee、Reflection AI、Human&、Prime Intellect、Periodic Labs、Ricursive Intelligenceなどが勢いを増していると指摘されました。特にGeminiとAnthropicは、OpenAIを犠牲にして「台頭している」と見られています。
- 苦戦するスタートアップ:OpenAIのEvgenii Nikishin氏は、2022年から2024年にかけて多くのLLM/画像生成スタートアップが類似のピッチを展開し、独自の価値提案がなかったため、「静かに消滅しつつある」と分析しています。
カンファレンスを彩ったパーティーと交流
NeurIPSのもう一つの顔は、ネットワーキングと交流の場としてのパーティーシーンです。今年は特に以下のイベントが話題となりました。
- Model Ship:Allen Institute for AIのNathan Lambert氏が共同主催した、200人のトップ研究者、投資家、著名人が招待されたクルーズパーティーは、その豪華さとダンスフロアへのコミットメントで「前例のない」と評されました。
- Laude Lounge:Andy Konwinski氏主催のラウンジは、Jeff Dean氏、Yoshua Bengio氏などトップ研究者が訪れるホットスポットとなりました。
- MetaとOpenAIのパーティー:MetaのMaya Bechler-Speicher氏は、Metaパーティーを「最も印象的な企業イベントの一つ」と評価。OpenAIのEvgenii Nikishin氏は自社パーティーを「😎」と表現しました。
- G-Researchのミシュラン三つ星ディナー:少数の研究者が招待されたこのディナーは、パーティーではないものの「絶対的に格別」と称されました。
しかし、中にはOpenAIのRoon氏のように「多すぎる」と、パーティーの熱狂に辟易する声もあり、NeurIPSが単なる学術会議の枠を超え、社交とビジネスの場として大きく変化している現状を浮き彫りにしました。
