クリエイティブ・コモンズ、AI向け「ペイ・トゥ・クロール」システムへの暫定的な支持を表明

クリエイティブ・コモンズがAI向け「ペイ・トゥ・クロール」を支持

非営利団体であるクリエイティブ・コモンズ(CC)は、AIウェブクローラーによるコンテンツアクセス時に、ウェブサイトへの対価支払いを自動化する「ペイ・トゥ・クロール」システムに対し、暫定的な支持を表明しました。これは、クリエイターが著作権を保持しつつ作品を共有することを可能にするライセンス運動を主導してきたCCにとって、AIエコシステムにおける新たな一歩となります。

CCは、「責任を持って実装されれば、『ペイ・トゥ・クロール』は、ウェブサイトがコンテンツ作成と共有を維持し、代替的な利用を管理し、それによって公共のアクセスを維持する手段となり得る」と述べ、このシステムがコンテンツが共有されなくなる、あるいはさらに厳しいペイウォールの裏に消えてしまう事態を防ぐ可能性を指摘しています。

「ペイ・トゥ・クロール」とは何か、その背景

「ペイ・トゥ・クロール」のアイデアは、AIボットがウェブサイトをスクレイピングしてモデルのトレーニングや更新のためにコンテンツを収集するたびに、料金を請求するというものです。

これまでウェブサイトは、Googleなどの検索エンジンにコンテンツをインデックス化させることを自由に許可し、検索結果に表示されることで訪問者やクリックを獲得するという恩恵を受けてきました。しかし、AI技術の台頭により状況は変化しています。消費者がAIチャットボットを介して回答を得た後、元の情報源をクリックして参照する可能性は低くなり、これが検索トラフィックを減少させ、出版社にとって壊滅的な打撃となっています。

「ペイ・トゥ・クロール」システムは、AIがもたらした収益への打撃から出版社が回復する手助けとなる可能性があります。また、これはAIプロバイダーと個別のコンテンツ契約を交渉する力が不足している中小規模のウェブ出版社にとっても有効な手段となり得ます。

関連企業の動向と懸念点

この「ペイ・トゥ・クロール」分野には、Cloudflareが先導する形で、Microsoft、ProRata.ai、TollBitといった企業が投資を進めています。また、RSL Collectiveは、クローラーがウェブサイトのどの部分にアクセスできるかを規定しつつも、クローラーを完全にブロックしない新しい標準「Really Simple Licensing(RSL)」の仕様を発表しており、Cloudflare、Akamai、Fastly、Yahoo、Ziff Davis、O’Reilly Mediaなどがこれらを支持しています。

CCは「ペイ・トゥ・クロール」への支持にあたり、いくつかの注意点を挙げています。それは、このようなシステムがウェブ上での権力集中を引き起こしたり、研究者、非営利団体、文化遺産機関、教育者、その他の公共の利益のために活動するアクターによるコンテンツへのアクセスを阻害する可能性です。

責任ある実装のための原則

これらの懸念に対処するため、CCは責任ある「ペイ・トゥ・クロール」のための原則を提案しています。

  • 「ペイ・トゥ・クロール」をすべてのウェブサイトのデフォルト設定にしないこと。
  • ウェブに対する包括的なルールを避けること。
  • コンテンツのブロッキングだけでなく、スロットリング(アクセス制限)も可能にすること。
  • 公共の利益のためのアクセスを保護すること。
  • オープンで相互運用可能であり、標準化されたコンポーネントで構築すること。

これらの原則は、AI時代における技術とツールの開発を目的としたCCの「CC Signals」プロジェクトの一環として提唱されています。


元記事: https://techcrunch.com/2025/12/15/creative-commons-announces-tentative-support-for-ai-pay-to-crawl-systems/