シリコンバレーがトランプを「ブロリガーチ」に変貌させた方法:AI政策を巡る攻防

2025年:トランプ政権とAI政策の転換点

2025年は、トランプ前大統領とポピュリスト右派が大手テクノロジー企業を屈服させる年になると予想されていましたが、現実は異なりました。本記事では、シリコンバレーがどのようにしてトランプ政権に影響を与え、AI政策の方向性を自らに有利なように転換させたのかを解説します。

本記事の筆者は、シリコンバレーがトランプ氏を「ブロリガーチ」(“broligarch”:テクノロジー業界の「お友達」のような金持ちを指す造語)に変貌させたと指摘しています。

テック業界による積極的な政策介入

テック業界は、政治における常識的なルールを超えた、積極的かつ迅速な手段で法改正を試みています。彼らは州による独自のAI法制定を禁止するよう議会を説得しようとし、それが失敗すると、州の規制を阻止するための大統領令への署名をトランプ大統領に働きかけました。

また、著作権や知的財産保護の変更を狙い、米国議会図書館に影響を与えようとしたり、連邦通信委員会(FCC)の権限がAI規制に応用可能であるとの見解を提示したりもしています。これらの動きの背景には、「中国とのAI競争に打ち勝つためには、規制が障害となる」という主張があります。

見過ごされるAIの人間的コストと社会への影響

テック業界の政策介入は、AIがもたらす差し迫った、現実的かつ増大する人間的コストにはほとんど触れていません。実際、AIに対する国民の懸念は広範に及び、急速な雇用喪失、ユーザー(特に若年層)への心理的悪影響に関する報告が日々増加しています。

さらに、データセンターが環境に与える影響、敵対勢力によるAIの兵器化、そしてAIが人類に存続の危機をもたらすという「終末論」的見解など、より広範な問題も存在します。しかし、業界はこれらの問題への具体的な対策をほとんど提示していません。

シリコンバレーとトランプ政権の「共生」

当初、トランプ氏は大手テクノロジー企業へのポピュリスト的な不満の波を代表すると予想されていましたが、この1年足らずで状況は逆転しました。テック企業はトランプ氏の非営利団体に「寄付」を行い、MAGA(Make America Great Again)系のインターネットインフルエンサーがホワイトハウスの政策決定に影響を与え、イーロン・マスクのような億万長者もトランプ氏の支持を獲得しました。

結果として、トランプ氏の支持層がAIの抽象的で顔のない、無制限な力に直面する中で、大統領はAIの億万長者のクリエイターたちが支配権を握ることを積極的に支援しているように見えます。

The Vergeが伝える今週のITニュース

  • 「機械を養う」: OpenAIやAnthropicのような最先端の研究所は、AGI(汎用人工知能)達成のために膨大なデータを必要とし、MercorやHandshakeのような企業がこのAIブームで成功を収めています。
  • 「Stack OverflowユーザーはAIを信用していないが、それでも使っている」: Stack OverflowのCEO、Prashanth Chandrasekar氏は、ChatGPTが同サービスにとって「存在を揺るがす瞬間」となったと語ります。
  • 「1,000ページに及ぶ文書がDOGEについて語ること」: Brendan Carr氏が議会に向かう中、新たに公開された文書にはDOGEがFCCで何をしたかについて多くは書かれていません。
  • 「税額控除がなくなる前にソーラーパネルを設置する『大急ぎ』」: ソーラー産業は、ドナルド・トランプ氏のクリーンエネルギー攻撃を乗り切るために転換を図っています。
  • 「親たちがニューヨーク州知事に画期的なAI安全法案への署名を求める」: 彼らはこれを「最小限の安全対策」と呼び、基準となるべきだと主張しています。
  • 「AIチップのラックは重すぎる」: 古いデータセンターは、大量のGPUを物理的に支えることができません。これが大規模なAIデータセンター建設の理由の一つです。

元記事: https://www.theverge.com/column/845955/donald-trump-big-tech-2025