イーロン・マスク氏による米国政府改革の波紋
2025年12月17日、米メディアThe Vergeは、イーロン・マスク氏が米国政府効率化省(Department of Government Efficiency, DOGE)長官在任中に行った急進的な改革について報じました。特に、米国国際開発庁(USAID)の閉鎖は、ドナルド・トランプ元大統領の首席補佐官であったスージー・ワイルズ氏を「愕然とさせた」と伝えられています。マスク氏による連邦政府職員の大規模な削減と組織再編は、米国政府内に大きな混乱と倫理的な議論を巻き起こしました。
トランプ政権元首席補佐官の懸念とマスク氏への見解
ワイルズ氏は、マスク氏を「完全な単独行動者」と評し、その行動がトランプ政権に不必要な危機をもたらしたと述べています。USAID の閉鎖については、当初「度を越していると感じた」と語り、同庁が非常に重要な良い仕事をしているという自身の信念と矛盾する決定であったことを明らかにしました。ワイルズ氏が、マスク氏が政権に及ぼした影響、あるいは損害について公に語るのは異例であり、彼の行動の深刻さを浮き彫りにしています。
人道支援への壊滅的な影響と混乱
センター・フォー・グローバル・デベロップメントが発表した報告書によると、USAID の人道支援の削減は、年間50万人から70万人もの命を奪う可能性があると推定されています。トランプ元大統領は、海外援助凍結に関する大統領令で「人命救助プログラムは温存されるべき」と明言していたにもかかわらず、マスク氏の DOGE はこれらのプログラムを閉鎖に追い込みました。閉鎖の過程では、USAID の職員が機密データを含むラップトップと共にオフィスから閉め出されるなど、深刻な混乱と運用上の問題が発生しました。
マスク氏の「猛進」哲学と政府運営の軋轢
ワイルズ氏は、マスク氏がこれらの改革を断行した際、「他の人々が聞いたらぞっとするだろうと知っていたからだろう」と推測しています。彼女はマスク氏の強引な手法に疑問を呈しつつも、彼の「すべてを迅速に成し遂げなければならない」という哲学を理解しようと努めました。「漸進主義者では、ロケットを月に到達させることはできないだろう」というマスク氏の考え方は、従来の政府の官僚主義的なプロセスと激しく衝突しました。しかし、ワイルズ氏は「オフィスから人々を締め出すわけにはいかない」と直接彼に伝えたと明かしており、その影響を緩和しようと奔走しました。
異端児マスク氏の評価と背景
記事では、マスク氏の特異な行動様式についても触れられています。ワイルズ氏は、マスク氏が「ケタミン常用者」であり、オフィスビルで寝袋で寝る「風変わりな人物」であると証言しています。また、彼が公に物議を醸すツイートをした際には、「彼はマイクロドージングをしている時にそうなるのだと思う」と述べ、その行動の背景に言及しました。ワイルズ氏はマスク氏の「天才性」を認めつつも、その異例な行動が米国政府の運営に与える多大な影響と、それに対する自身の葛藤が伺えます。IT界の巨人が政治の舞台で引き起こす波乱は、今後も議論を呼びそうです。
元記事: https://www.theverge.com/policy/846054/elon-musk-susie-wiles-doge-usaid
