電動アシスト自転車大手Rad Power Bikesがチャプター11破産申請:市場の変革期か

電動アシスト自転車大手Rad Power Bikesが破産申請

電動アシスト自転車市場の主要企業であるRad Power Bikesが、米国連邦破産法11条(チャプター11)の適用を申請しました。これは、新たな資金調達なしには事業継続が困難になると従業員に警告してからわずか数週間後のことです。TechCrunchの報道によると、同社は破産手続き中も事業を継続し、今後45〜60日以内に事業売却を目指しています。

Rad Power Bikesの広報担当者は、「この措置は、Radに日々依存している人々にとって最善の結果を追求しながら、通常の事業運営を継続することを可能にするものです。私たちの目標は、会社を存続させ、ライダー、ベンダー、サプライヤー、パートナーとの関係を維持することです」とコメントしています。

パンデミック後の市場の冷え込みと経営再編

Rad Power Bikesの経営破綻は、パンデミック期に爆発的な需要を経験した電動アシスト自転車業界全体の課題を浮き彫りにしています。需要のピークが過ぎ去った後、同社は数回にわたる大規模な人員削減(レイオフ)を実施し、今年初めにはCEOの交代を経験しました。

新CEOのカシ・レンツチ氏は、低迷する企業の立て直しに豊富な経験を持つ人物です。彼女の指揮の下、Rad Power Bikesは直販(D2C)モデルから小売店を中心とした販売戦略への転換を進めていました。これは、より広範な顧客層へのリーチと顧客関係の強化を目指すものでしたが、今回の破産申請に至った形です。

財務状況と未払い関税の課題

破産申請書類によると、Rad Power Bikesは3,200万ドルの資産に対し、7,300万ドルの負債を抱えています。特に注目すべきは、負債のうち800万ドル以上が米国税関・国境警備局に対する未払い関税である点です。同社はこの請求を「係争中」としていますが、過去にはドナルド・トランプ政権時の関税が電動スケートボード企業Boostedの経営に打撃を与え、最終的に倒産に追い込んだ事例もあり、貿易政策が企業経営に与える影響の大きさが改めて示唆されます。

バッテリー安全性問題と業界の再編動向

財務上の課題に加えて、Rad Power Bikesは安全性に関する問題にも直面していました。米消費者製品安全委員会(CPSC)は、過去のRad Power Bikes製バッテリーが「深刻な傷害や死亡のリスク」をもたらす可能性があると警告。これは31件の火災報告を受けたものでしたが、Rad Power Bikes側はCPSCの指摘に「強く反論する」姿勢を示しています。

電動アシスト自転車業界では、Rad Power Bikesと同様にVanMoofやCakeといった企業も過去に破産を経験しましたが、これら企業は新たなオーナーを見つけて事業を再建しています。Rad Power Bikesもまた、事業売却を通じて再建の道を探ることになります。

今後の展望

Rad Power Bikesが再建の道を歩む中で、新しいオーナーシップの下でどのような戦略が展開されるかが注目されます。この経営破綻は、電動アシスト自転車市場が成熟期を迎え、競争が激化する中で、企業が持続可能な成長モデルを確立することの重要性を示しています。


元記事: https://techcrunch.com/2025/12/17/rad-power-bikes-files-for-bankruptcy-and-is-looking-to-sell-the-business/