トランプ・メディアが核融合発電に参入:AI時代におけるエネルギーの「聖杯」への挑戦

トランプ・メディア、核融合エネルギー分野に参入

トランプ・メディア(Truth Socialの親会社)が、核融合発電の開発競争に新たなプレイヤーとして参入しました。同社は木曜日、核融合企業TAE Technologiesとの合併契約を発表し、2026年にも最初の実用規模核融合発電所の着工、そして2031年には初発電を目指すという野心的な計画を明らかにしました。これは極めて意欲的なスケジュールであり、財政的および規制上の課題だけでなく、科学的・工学的な障壁も多大に存在します。

核融合技術:AI時代のエネルギー需要に応える「聖杯」

核融合は「クリーンエネルギー技術の聖杯」とされており、特にAIデータセンターの膨大な電力需要を満たす潜在的な供給源として、多くのAI企業が注目しています。原子核を融合させて莫大なエネルギーを生成するこの技術は、化石燃料による温室効果ガスの排出や、現在の核分裂炉が抱える放射性廃棄物の問題を回避できる可能性があります。

ドナルド・トランプ前大統領はクリーンエネルギーへの懐疑的な姿勢を示してきましたが、新たなAIデータセンターの急速な開発という点ではテクノロジー業界と共通の関心を持っています。データセンターのエネルギー消費は、電力料金の高騰や環境汚染への懸念から、地域社会からの反発を招いており、Google、Microsoftなどの大手テック企業も核融合発電所からの電力購入契約を結ぶなど、この分野への投資が加速しています。サム・アルトマン、ビル・ゲイツ、ジェフ・ベゾスといった著名人も核融合スタートアップを支援しています。

超えるべき科学的・工学的課題

星の内部で起こる核融合反応を地球上で再現することは非常に困難です。長年にわたる科学者たちの大きな課題は、核融合反応から投入エネルギーを上回る正味のエネルギー(点火)を得る方法です。2022年にローレンス・リバモア国立研究所(NIF)が初めて点火に成功しましたが、TAEを含む他のグループはまだこれを達成していません。

NIFのブレークスルーは、192本のレーザービームを燃料ペレットに照射する慣性閉じ込め方式によるものでした。これに対し、TAEが開発している炉は、逆転磁場配位(FRC)と呼ばれるハイブリッド戦略を採用しており、磁場と燃料ビームの注入を組み合わせています。

商業化への道のりと投資の重要性

専門家たちは、商用核融合発電所が実際に電力供給を開始する時期について慎重な見方を示しています。NIFの実験では1.5倍の正味エネルギーゲインを達成しましたが、レーザー核融合発電所では経済的に成立させるために50〜100倍のゲインが必要とされています。

トランプ政権は核融合技術推進のロードマップを発表しており、エネルギー省は2030年代半ばまでに商用規模の核融合発電をグリッドに導入する目標を設定しています。また、核融合炉は米国で「粒子加速器」として規制されているため、核分裂炉に適用されるような長期にわたる連邦認可要件を回避できる可能性があります。

今回のTrump MediaとTAE Technologiesの合併は、TAEの野心に多額の資金を注入する可能性があります。TAEはこれまでGoogle、Chevron Technology Ventures、Goldman Sachsなどから13億ドル以上を調達しており、今回の合併によりTrump Mediaから3億ドルが追加されます。TAEは最新の研究炉「Norm」のブレークスルーにより、以前計画していた「Copernicus」炉をスキップし、「Da Vinci」プロトタイプ発電所の開発に直接移行できると発表しています。これにより、コストと時間を大幅に削減できるとされています。

しかし、核融合技術の商用化には、燃料や極限の圧力・温度に耐えうる材料のサプライチェーン構築など、設計以外の多くの困難な課題が残されています。


元記事: https://www.theverge.com/report/848205/nuclear-fusion-energy-trump-media-tae