ニューヨーク州、AI安全規制を強化
ニューヨーク州のキャシー・ホークル知事は、2025年12月20日、AIの安全性と透明性を規制する「RAISE Act(Responsible AI Innovation and Safety in Enterprises Act)」に署名しました。これにより、ニューヨーク州はカリフォルニア州に次いで、米国で主要なAI安全法を制定した2番目の州となります。
RAISE Actは今年6月に州議会を通過しましたが、テック業界からのロビー活動を受け、ホークル知事は法案の修正を提案していました。しかし、最終的には元の法案に署名することで合意し、議会は来年、知事が求めた変更を加えることで同意しました。
RAISE Actの主な要件
この新法は、大手AI開発者に対して以下の義務を課します。
- 安全性プロトコルの公開:自社の安全性に関するプロトコル情報を公開すること。
- 事故報告の義務化:安全上の問題が発生した場合、72時間以内に州に報告すること。
- 監視体制の確立:金融サービス局内にAI開発を監視するための新しい部署を設置すること。
また、企業が安全性報告書の提出を怠ったり、虚偽の申告をした場合、最大100万ドル(約1億4千万円)の罰金が科され、その後の違反に対しては300万ドルに達する可能性があります。
業界と政治からの反応
ホークル知事は、この法律が「連邦政府が共通の規制を怠る中、国民を保護するための統一的な基準を確立する」と述べ、カリフォルニア州の取り組みを称賛しました。法案の共同提案者であるアンドリュー・グーナーデス州上院議員は、「大手テクノロジー企業は、我々の法案を葬り去ることができると考えていたが、我々はそれを阻止し、国内で最も強力なAI安全法を可決した」とコメントしました。
OpenAIとAnthropicは、ニューヨーク州の法案を支持しつつ、連邦レベルでの統一的なAI規制の必要性を訴えています。Anthropicのサラ・ヘック氏は、「国内の主要2州がAI透明性法を制定したという事実は、安全性の極めて重要な意義を示しており、議会がこれらを基盤に構築するよう促すべきだ」と語りました。
一方で、テック業界内には反対意見も存在します。Andreessen HorowitzとOpenAIのグレッグ・ブロックマン社長が支援するスーパーPACは、法案の共同提案者であるアレックス・ボレス下院議員への挑戦を画策しています。さらに、ドナルド・トランプ前大統領は、連邦機関が州のAI法に異議を唱えるよう指示する大統領令に署名しており、これは州のAI規制能力を抑制しようとする最新の試みであり、法廷で争われる可能性が高いとみられています。
今後の展望
ニューヨーク州とカリフォルニア州がAI規制において主導的な役割を果たす中、連邦政府の動向が注目されます。州レベルでの規制が広がることで、将来的には全米規模での統一的なAI安全基準が確立される可能性も浮上しています。この動きは、AI技術の健全な発展と社会への統合において、重要な転換点となるでしょう。
