新興ディープテックファンド「Wave Function Ventures」が1,500万ドルを調達
2025年10月3日、新たなディープテックファンドであるWave Function Venturesが、最初のファンドで1,510万ドル(約22億円)の資金調達を完了したことを発表しました。このファンドは、元SpaceXのエンジニアであるジェイミー・ガル氏によって設立され、原子力エネルギー、ヒューマノイドロボット、航空宇宙といった分野の初期段階のスタートアップに焦点を当てています。
創業者ジェイミー・ガルの軌跡:航空宇宙からベンチャーキャピタルへ
Wave Function Venturesの創業者であるジェイミー・ガル氏は、2007年にスタンフォード大学で航空学の修士号を取得後、航空宇宙分野で輝かしいキャリアを築きました。彼はまず、実験的な航空機開発で知られるScaled Compositesに参加し、その後SpaceXに移籍。そこでFalcon 9ロケットの再利用化に貢献し、同社の歴史における重要なマイルストーンを達成しました。2016年からはエンジェル投資を開始し、Boom SupersonicやK2 Spaceなどに投資。また、eVTOLスタートアップのTalyn Airを共同設立し、Y CombinatorのPioneer Fundのベンチャーパートナーも務めています。
Wave Function Venturesの投資戦略と重点分野
ガル氏は、自身の豊富な経験を活かし、Wave Function Venturesを通じてディープテック分野のスタートアップを支援することを目指しています。既に9社への投資を完了しており、最終的にはこのファンドから約25社のシードまたはプレシード段階の企業に投資する予定です。投資対象は多岐にわたり、以下のような革新的な技術領域が含まれます。
- 原子力エネルギー(Deep Fission)
- ヒューマノイドロボット(Persona AI)
- 航空宇宙(Airship Industries)
ガル氏は、ディープテック企業は初期段階でより多くの資本を必要とするものの、政府契約や資産担保融資といった非ベンチャー資金を活用することで、ソフトウェア企業よりも強固な競争優位性を確立できると考えています。
高まるディープテック投資の潮流
Wave Function Venturesの登場は、ディープテック分野への資金流入が加速している時期と重なります。航空宇宙や防衛といった分野への注目が高まる中、ディープテックへの投資は増加傾向にあります。今年初めには、シリコンバレーを拠点とするディープテックファンド「Leitmotif」が、フォルクスワーゲン・グループから3億ドルの資金を調達し、米国と欧州のハードウェアおよび製造スタートアップを支援する動きを見せています。これは、ディープテックが次の10年から20年で大きなリターンを生み出す可能性を秘めているというガル氏の信念を裏付けるものです。
ガルのビジョン:ディープテックがもたらす未来と忍耐の価値
ガル氏は、ディープテック分野での成功には時間と忍耐が必要であると強調します。彼はScaled Composites時代に世界最大の航空機であるStratolaunchの開発に携わった経験を例に挙げ、プロジェクトの実現には長期間を要することもあるが、その成果は計り知れないと語っています。彼の多様な経験は、創業者が最も不確実な初期段階を乗り越え、企業を構築する上で強力な支援となるでしょう。
元記事: https://techcrunch.com/2025/10/03/new-deep-tech-fund-wave-function-ventures-raises-15-million/