新検索エンジン「Lore」が1.1億円の資金調達
インターネットの「沼」に深く潜り込みたい熱狂的なファンを対象とした新しい検索エンジン「Lore」が、プレシードラウンドで110万ドル(約1.1億円)の資金調達に成功しました。創設者のゼーラ・ナクヴィ氏(26歳)は、かつて自身が経験したファン活動の喜びを現代のインターネットに再構築することを目指しています。
ナクヴィ氏は、2010年代のTumblrやTwitterで熱心なファンとして活動し、マーベル映画の公開日を分析したり、ワン・ダイレクションの動向を追跡したりすることに何百時間も費やしました。しかし、その膨大な情報収集の記録が失われてしまったことに失望し、ユーザーの「消費」を追跡するプラットフォームの必要性を感じたと言います。
「執着」をパーソナライズするLoreの革新的なアプローチ
Loreは、単なる情報検索ツールではなく、ユーザーの「執着」を深く掘り下げ、パーソナライズされた体験を提供するプラットフォームです。主な機能は以下の通りです。
- ファン理論、解釈、文化的背景、イースターエッグへのリンクを提供。
- ユーザーの「執着」のパーソナライズされたグラフを構築。
- ファンダムや「推し」の最新情報をフィードで表示。
- ユーザーの現在の「執着」に関する月次レポートを提供。
ナクヴィ氏は、「知識を消費するだけでなく、まるで遊ぶように扱える」と語り、ユーザーが単一の理論に深く入り込んだり、複数のファンダム間のつながりを発見したりできると説明しています。
セキュリティとプライバシーへの示唆
Loreの核となる機能は、ユーザーのインターネット上での「執着」や「消費」行動を追跡し、パーソナライズされたデータグラフを構築する点にあります。これは、ユーザー体験を向上させる一方で、個人データの収集と利用に関する重要なプライバシーの側面を提起します。
- 詳細なプロファイリング: ユーザーの興味や関心、消費パターンに関する非常に詳細なプロファイルが作成される可能性があります。
- データ保護の重要性: このような機密性の高い個人データが適切に保護され、不正アクセスや悪用から守られるための強固なセキュリティ対策が不可欠です。
- 透明性とユーザーコントロール: ユーザーが自身のデータがどのように収集、利用、共有されるかについて明確に理解し、その管理権を持つことが重要になります。
「ファンダムの図書館」を目指すLoreが、ユーザーのプライバシー保護にどのように取り組むかは、今後の注目点となるでしょう。
市場での位置付けと将来性
ナクヴィ氏は、Perplexity、Reddit、Wikipediaといった既存のプラットフォームと比較されることを認識しつつも、Loreは「ファンダムを念頭に置いて構築された」点が異なると強調しています。彼女は、現代のソーシャルメディアが「ドーパミンヒット」や「iPadキッズの行動」に傾倒していると批判し、Loreが「より静かで、より人間的で、情熱と記憶を中心に構築された」次世代のソーシャルメディアになると展望しています。
「Loreは、ファンダム時代のアレクサンドリア図書館を再建する試みです」とナクヴィ氏は述べ、ユーザーが「執着」を恥じることなく、神聖なものとして扱える場所を提供したいと考えています。
資金調達と初期の成功
今回のプレシードラウンドはVillage Globalが主導し、Precursor Venturesも参加しました。Precursor Venturesのマネージングパートナーであるチャールズ・ハドソン氏は、「Loreはファンダムが待ち望んでいた製品を構築している」とコメントしています。
ナクヴィ氏によると、初期の実験では1,000人以上のログイン、約24,000回の検索、合計200時間もの「沼」への没入が記録されており、この高いエンゲージメントが製品の必要性を証明していると語っています。調達した資金は、ユーザー獲得と製品テストの継続に充てられる予定です。