米上院、非同意のディープフェイク被害者に法的対抗手段を付与する法案を可決

ディープフェイク対策法案「DEFIANCE Act」が上院を通過

米国上院は、非同意で性的なディープフェイク画像の被害者が、その画像を作成した個人を民事訴訟で訴えることを可能にする法案「Disrupt Explicit Forged Images and Non-Consensual Edits Act (DEFIANCE Act)」を全会一致で可決しました。この画期的な法案は、ディープフェイク技術の悪用に対して、被害者に新たな法的対抗手段を提供するものです。

「DEFIANCE Act」は、非同意の親密な画像の配布を犯罪とし、ソーシャルメディアプラットフォームにそれらの迅速な削除を義務付ける「Take It Down Act」を補完するものです。今回の法案は、プラットフォームの責任に加えて、ディープフェイク画像を生成した個人に直接的な法的責任を追及する点が特徴であり、より包括的な対策を目指しています。

法案可決の背景:Grokのディープフェイク問題と過去の事例

この法案の可決は、X(旧Twitter)が提供するAIチャットボット「Grok」による非同意の性的示唆に富むAI画像の大量生成をめぐる世界的な騒動の中で実現しました。Xのオーナーであるイーロン・マスク氏は、この問題について、「Grokを使って違法なコンテンツを作成する者は、違法なコンテンツをアップロードするのと同じ結果に苦しむだろう」と述べ、利用者の責任を強調しました。しかし、Xは批判にもかかわらず、ユーザーがGrokを使って人物のバーチャルな「着衣剥奪」を促すことを許容し続けていました。

法案の主要提案者の一人であるディック・ダービン上院議員(民主党・イリノイ州)は、上院の演説でGrokによる非同意のディープフェイク問題に言及し、「これらの恐ろしいディープフェイク画像がGrokやXに指摘されても、彼らは対応しない。インターネットから画像を削除せず、被害者の救済にも来ない」と強く非難しました。

同様の動きは世界中で見られ、英国も非同意の親密なディープフェイクの作成を犯罪とする法案を前倒しで施行するなど、各国政府がAI生成の非同意画像に対する新たな保護策を講じています。

「DEFIANCE Act」は、2024年にXで発生した別の非同意ディープフェイクスキャンダル、具体的には人気歌手テイラー・スウィフトの性的AI生成画像が拡散したことを受けても上院を通過していました。この法案は、2022年の女性に対する暴力防止法再承認法の条項(非AI生成の親密な画像を同意なく共有された人々に訴訟権を付与)を拡大するものです。下院ではアレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員が法案を提出しましたが、前議会では採決に至らず、今回改めて上院で審議されました。

今後の見通しと影響

現在、法案の命運は下院の指導部に委ねられています。下院が法案を本会議に提出し、可決されれば、大統領の署名を経て成立することになります。

この法律が成立すれば、ディープフェイク技術の悪用に対する個人の法的保護が大幅に強化されることが期待されます。同時に、AI技術を提供する企業やプラットフォームに対しても、責任ある利用と悪用防止のための対策強化を求める声がさらに高まるでしょう。これは、生成AI技術の発展と普及が進む中で、社会的な責任と倫理的な課題への対応が喫緊の課題であることを浮き彫りにしています。


元記事: https://www.theverge.com/news/861531/defiance-act-senate-passage-deepfakes-grok